研究課題/領域番号 |
17K17701
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
篠原 恭介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (20527387)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 繊毛 / アクチン / 細胞骨格 / 電荷 |
研究実績の概要 |
今年度は主に (1) アクチン束化タンパク質Dpcdの機能構造解析と(2)Dpcd蛋白の細胞内局在の超解像度観察を行った。(1)では、マウス由来のDpcd組み換え蛋白質を精製・結晶化し結晶解析により構造を決定した。その結果、Dpcd蛋白は`正電荷を持つクラスターを持つ事が明らかとなった。アクチンフィラメント表面は負電荷を持つため、この領域がアクチン結合ドメインである可能性がある。そこで正電荷クラスターを構成する一つのリジンを負電荷を持つグルタミン酸に換えK138E変異体を作製した。超遠心機を用いたアクチンフィラメントとの共沈実験により結合を確認したところ、K138E変異体は野生型に比べて著しくアクチンとの結合能が減少した。また、アクチン束化活性も減少した。この事から正電荷クラスターがアクチン結合ドメインである事が示唆された。(2)では、超解像度顕微鏡STEDを用いてマウス気管繊毛細胞内のDpcdの局在を詳しく調べた。その結果、Dpcdはアクチン束全体ではなく、アクチン束の交差部位やアクチン束間を架橋するようにアクチンの近傍に局所的に濃縮して存在していた。この事は生化学的なアクチンとDpcdの結合比のデータとも一致する。局在のパターンからDpcdは細胞表面のアクチンネットワークが担う膜の機械的強度あるいは剛性に寄与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定よりも早くDpcd蛋白の構造が決定し、アクチン結合ドメインの同定に至った。また、共同研究により超解像度顕微鏡の使用が可能となり細胞内の目的蛋白質の局在が詳しく分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の計画にある細胞表面の機械的剛性(かたさ)の計測とDpcdが形成するアクチン束のクライオ電子顕微鏡解析を進める。細胞の剛性の計測は予定通り微小なガラス管による吸引実験により行う。いずれも手法に変更はなく予定通り進める。 また、追加の項目ではあるがアクチンネットワークの生理的意義の検証に全力を注ぐ。Dpcd変異マウスの細胞レベルでの異常をよく観察しDpcdが形成するアクチンネットワークが欠損する事による細胞レベルの影響を詳しく明らかにする。
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