研究課題/領域番号 |
17K17702
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村上 智亮 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10728447)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アミロイドーシス / ウズラ / フラミンゴ / 伝達性疾患 |
研究実績の概要 |
若齢ウズラおよび成熟ウズラに対し、リポポリサッカライド(LPS)2 mg/kg BW を週2回、4週に渡って投与した。LPSの初回投与と同時にウズラアミロイドの静脈内投与(1, 10 mg)もしくは経口投与(1, 10, 100 mg)を実施し、4週後に剖検を実施した。病理組織学的解析の結果、若齢・成熟ウズラの双方において、静脈内投与群・経口投与群ともにアミロイド非投与群と比較して有意な全身アミロイド沈着量の増加がみられた。このことから、ウズラのAAアミロイドーシスが静脈内投与だけでなく、経口投与によっても誘発(伝達)可能であることが示された。ウズラを用いた動物実験モデルはニワトリと比較してハンドリングや飼育スペース確保に有利であり、鳥類アミロイドーシスの研究を実施する上で非常に有効である。次年度はこの経口伝播モデルを使用し、鳥類AAアミロイドーシスの水平伝播性について評価を実施予定である。 某動物園にて斃死したフラミンゴ58例の全身臓器に対して、病理学的解析を実施し、うち27例において全身性にアミロイド沈着を認めた。このことから、動物園のフラミンゴが高率にアミロイドーシスを発症していることが示唆された。さらに27例のうち、1例において大脳全域にわたって重度の脳血管アミロイドーシス(CAA)が認められ、5例において脳室周囲の一部の脳血管壁へのアミロイド沈着が認められた。前者の1例において、沈着アミロイドは免疫組織学的にAβおよびAAの双方に陽性を呈し、残る5例ではAβに陰性、AAに陽性を示した。鳥類におけるCAAの報告は稀であり、AA沈着に関しては本研究が初の発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ウズラを用いてAAアミロイドーシスの経口伝播モデルを確立出来た。本モデルを用いることで平成30年度以降の経口伝播実験が非常にスムーズに遂行可能である。 研究計画に記載していた「【2】環境中アミロイドの検出」は達成できなかった。これは、環境中に蓄積しているアミロイドが非常に微量であることが理由として考えられる。 予期していなかった事であるが、動物園のフラミンゴを検索していく中で、脳へのアミロイド沈着を発見した。ヒトを含め、AAアミロイドーシスにおける脳血管アミロイド沈着は極めて稀な病態であるにもかかわらず、フラミンゴはアミロイドーシス罹患27例のうち、実に6例において脳血管アミロイド沈着を生じていた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は引き続き、環境中アミロイドの検出を試みると共に、フラミンゴ飼育池の水をウズラモデルに直接経口投与し、アミロイドーシス誘発性を検証する。また、鳥類AAアミロイドーシスの水平伝播性を検証する目的で、AAアミロイドーシス罹患ウズラと非罹患ウズラを同居させ、ケージ内で水平伝播が生じるかどうかを検証する。 平成29年度の研究にて、フラミンゴAAアミロイドーシスにおける脳血管アミロイド沈着を発見した。このことから、フラミンゴは全身性アミロイドーシスにおけるCAAの病態モデルとしての使用が期待できる。平成30年度はフラミンゴの脳血管アミロイド沈着について、病理組織学的解析およびプロテオーム解析を実施し、詳細な病態解析を実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年3月25~29日開催の学会参加のための旅費を事前計算する際に見落としがあり、試算額と実額に2000円の差額が生じたため。繰り越した2000円は適宜次年度の研究費用に充てる計画である。
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