研究実績の概要 |
廃熱を有用なエネルギーに変換する機器の研究開発が世界中で行われ,その一つとして熱音響エンジンが注目されている.熱音響エンジンは,その駆動にある閾値以上の温度の熱源が必要であり,その値は通常150~500℃の間にある.この閾値を150℃以下にできれば,全廃熱の40%を占める低温廃熱の有効活用が可能となる.申請者は閾値を下げる方法として作動流体(窒素ガスやヘリウムガス)に水を加える方法を提案し,閾値を300℃から80℃に低下させることに成功した.しかし,そのメカニズムはいまだ不明である.そこで,本研究では水の添加がどのようなメカニズムで閾値の低下に寄与しているかを理論および実験により解明し,さらに,水の添加が熱音響エンジンのエネルギー変換効率に与える影響を明らかにすることを目的とした. 熱音響エンジンは管とスタックと呼ばれる狭い流路の集合体,スタックの両端に温度差をつける熱交換器で構成されている.管の形状により熱音響エンジンは3つのタイプに分類される.それぞれ,まっすぐな管,ループ状の管,まっすぐな管とループ状の管を組み合わせとなる.本研究ではそれぞれのタイプの熱音響エンジンを作成し,閾値がどのように変化するかを実験的に明らかにした.また,液膜が管壁に存在する環境での音波の波動方程式として提案されているRaspetの式を用いて,数値計算を行い,実験結果と計算結果の良い一致を得た.そこで,Raspetの式を用いて,熱音響エンジンの効率を推定し,水の添加が効率に与える効果を明らかにした.
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