最終年度には、長期飼育種が変態するまで飼育実験を継続し、最終データを取得した。その後、これまでに得られたデータを統合して解析し、変態戦略モデルを構築した。モデルでは、各個体の成長曲線と、各種に仮定した適応度曲線とから最適変態点を算出し、実際の変態点とのずれが小さくなるパラメータを計算した。このモデルのパラメータを種間比較することで、各種の生態的特性を説明した。ここから、パラメータとして設定した2変数(変態サイズ、幼生期間がそれぞれ適応度に与える影響の度合いを表す)が分離できないこと、2変数だけでは全ての生態的特性を説明できないことが明らかとなった。これにより、今後の新たなモデルの設定においては、幼生期、成体期それぞれにおける生存率、成長率を考慮し、より複雑なパラメータ設定を行うことが必要であることが示唆された。この成果については国際学会、および国内学会で発表するとともに、論文を執筆し、投稿準備中である。一方で、野外の幼生に対して蛍光シリコンを用いた個体識別を行なうという世界でも類を見ない手法を適応し、再捕獲を行うことで、野外における幼生の成長速度や変態、移動についてのデータを得た。さらに、骨分析においては、骨の部位ごとの安定同位体比の超微量分析をすることで、雑食性だが主に植食性の幼生期と、肉食性になる変態後の骨の部位を判別する手法を試行した。これは、変態時のサイズ推定が可能となる世界初の手法の端緒となるものである。
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