研究課題/領域番号 |
17K17707
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
成田 麗奈 東京藝術大学, 音楽学部, 助手 (30610282)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 近代フランス音楽 / カノン作曲家 / 音楽史記述 |
研究実績の概要 |
H29年4-7月にかけて、研究の基礎的作業として本研究の根幹をなす資料調査を行うための予備的調査を行った。科研費研究(25870215)において調査した音楽史書217件のうち、通史・フランス音楽史・現代音楽史135件に焦点を絞り、刊行の目的・著者のプロフィール・想定読者層・「音楽史」の射程・時代区分など、基礎的な情報を整理した。 8月にはパリのBNFで第1回目の資料調査を行った。ここでは、3カ年の調査計画を立てるべく、音楽史書の再調査と、カノン作曲家19名の作曲家に関連する音楽家列伝および伝記/評伝を調査した。その結果、まずは音楽史書におけるカノン作曲家の記述を詳細に研究することが妥当であると判断し、音楽家列伝および伝記・評伝に関しては、音楽史書の記述との比較の際に参照するにとどめることを決定した。 10月には、音楽史書におけるカノン作曲家の位置づけの背景として、フランス音楽優位の音楽史記述に着目して日本音楽学会において研究発表を行った。フランス音楽優位を主張する上で、カノン作曲家の系譜の継続性やカノン作曲家の数的優位性が重視されていたことを指摘した。 11月およびH30年2月には、カノン作曲家のうちオペラ作曲家に焦点を当てるべく、舞台鑑賞と資料収集を行った。普仏戦争以降のフランス・オペラの題材や表現の方向性の変化について、作曲家の個別研究ではなく、音楽史書におけるオペラの位置づけの問題を検討する必要が生じたため、先行研究を整理し、H31年度まで時間をかけて成果をまとめる計画を立てた。 2月には、ケース・スタディとして、ノルベール・デュフルクの著作に焦点を当て、フランス音楽氏の盛衰やカノン作曲家の扱いに関して、19世紀音楽研究会で研究発表を行った。研究会での質疑応答をふまえ、研究成果は次年度に論文としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、カノン作曲家19名について、2年半でほぼ均等な人数に割り振って研究する予定であったが、今年度は研究の根幹に関わる基礎調査と問題の背景に焦点を当てて研究を進めた。また、研究成果をあげるのに時間を要する見込みのオペラ作曲家に関して、当初計画していた来年度ではなく今年度中に見込みを立てることができた。 今年度の研究によって、研究対象とする資料を絞り込み、考慮すべき論点や先行研究を整理することが出来たため、来年度に各作曲家に関する研究を集中的に実施する環境を整えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、昨年度の研究成果をふまえて、各作曲家についてカノン形成の過程を詳細に研究する。19名の作曲家のうち、①ドヒュッシー・フォーレ・ラヴェル、②六人組メンバー、③サティとストラヴィンスキーを中心に調査研究を進め、④フランク楽派、⑤オペラ作曲家に関しては、基礎調査を進めて次年度に本格的な調査研究を行う。 H31年度には成果報告書の出版とデータベース公開を予定しているため、これに関する下準備もH30年度から着手する予定である。
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