最終年度は非適応的測定型量子計算の計算能力を明らかにすることで、量子論の非局所性の強さを研究した。その結果、パリティを計算するコンピュータと非適応的測定型量子計算を組み合わせることで、小さなエラーを許すと ACC0と呼ばれる古典回路クラスの関数が効率的に計算できることが分かった。これは私の以前の研究成果である論理関数のフーリエ解析の手法と古典の回路計算量理論の道具を組み合わせることで得ることができた結果である。研究期間全体を通して、 1. 量子XORゲームの勝率と古典の通信複雑度の関係の不等式を改善した。 2. 量子XORゲームに基づいた非適応的測定型量子計算モデルについて、エラーを許さない場合の計算能力を計算する関数の二元多項式としての次数と結び付けた。 3. 上記の量子計算モデルについて小さなエラーを許した場合に ACC0 のクラスの関数が効率的に計算できることを示した。 という3つの結果が主な結果である。これらの研究は「量子論の持つ非局所性の強さを操作的に特徴付ける」という本研究課題の目標に基づいたものである。これまでに通信の観点から非局所性の強さを特徴付けるような研究はなされてきたが、量子計算の観点からアプローチするという点で独自性のある結果となっている。これからは最終年度の結果である3の論文化を目指す。また、逆に「上記の量子計算モデルで効率的に計算可能な関数は ACC0 に含まれる」という逆向きの結果の証明にも取り組むつもりである。
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