研究課題/領域番号 |
17K17717
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丹羽 栄貴 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (10707962)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 結晶構造解析 / 電気伝導度 / 結合原子価法 / 密度汎関数理論計算 |
研究実績の概要 |
酸化物イオン伝導体は、環境・エネルギー分野の諸問題の解決には必要不可欠であり、新規の高いイオン伝導度を持つ酸化物の開拓は、強く望まれている。本研究では、結晶構造データベースに収録されている酸化物の構造情報から結合原子価エネルギー計算と密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、効率的な新規酸化物イオン伝導体の探索法の開拓を目指す。結合原子価エネルギー計算からイオン伝導の移動度、DFT計算からキャリア密度について検討することができる。これらの計算からピックアップした酸化物を実際に作製し、酸化物イオンの導電率及び移動度、キャリア密度を見積もる。実験結果をフィードバックし、計算アプローチをより完成度の高いものへと押し上げていくことで、酸化物イオン伝導体のマテリアルズ・インフォマティクスを提案する。2017年度は、実際に計算化学アプローチから酸化物イオン伝導性が示唆された構造型を持つ酸化物を作製し、物性評価を行った。具体的には、Scを含む酸化物イオン伝導性の報告例のない構造型の酸化物を結晶構造データベース(ICSD)から、結合原子価に基づくエネルギー計算を実施し、酸化物イオン拡散のエネルギー障壁(Eb)を見積もり、スクリーニングを行った。Ba-Sc-Si酸化物の新しい構造型の酸化物イオン伝導体を上記のアプローチにより発見し、結晶構造解析と電気伝導度測定を実施した。また、Sc3+席にMg2+やCa2+を部分置換することによって、酸素欠損量が増加し、イオン伝導度が向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り、新しい構造型の酸化物イオン伝導体の発見に至った。具体的な方法としては、結晶構造データベースからイオン伝導性の報告がない構造を持つ酸化物をリストアップする。結晶構造データから結合原子価エネルギー計算と密度汎関数理論計算を用いて、イオン伝導の移動度とキャリア密度の観点からイオン伝導度が高くなりうる候補材料と選び出す。ピックアップした候補材料は単相試料を作製し、導電率・酸素不定比性・輸率などの導電特性評価を実施してきた。また、これらの研究成果が認められ、日本電気化学会内の固体化学の指針を考える研究会から田川記念固体化学奨励賞を受賞したりなど、研究成果の発信に関しても充実した1年であった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、上記に示した計算科学と物性評価実験を用いて、新構造型イオン伝導体を探索・発見していく予定である。現在、キャリアを導電率の温度依存性及び酸素分圧依存性の傾向から判断することをメインで実施しているが、様々な電気化学測定を立ち上げ、いつくかのアプローチから確認できるように準備中である。
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