研究課題
酸化物イオン伝導体とは、酸化物イオンもしくは酸素欠損が結晶内で最も優勢な電荷担体として機能する材料のことを指す。酸化物イオン伝導体は、固体酸化物形燃料電池や酸素透過膜、酸素センサーなど様々な高温電気化学デバイスへの応用が期待されている材料であり、水素エネルギー社会形成のためのキーテクノロジーの一つであり、新規の高い酸化物イオン伝導体の探索は、強く望まれている。本研究では、結晶構造データベースに収録されている酸化物の構造情報から結合原子価に基づくエネルギー(BVE)計算と密度汎関数理論(DFT)計算を用いて、効率的な新規酸化物イオン伝導体の探索法の開拓を目指す。これらの計算からピックアップした酸化物を実際に作製し、酸化物イオンの導電率及び移動度、キャリア密度を見積もる。実験結果をフィードバックし、計算アプローチをより完成度の高いものへと押し上げていくことで、酸化物イオン伝導体のマテリアルズ・インフォマティクスを提案する。2018年度は、上記の方法で発見した新構造型の酸化物イオン伝導体BaSc2Si3O10について詳しく解析を行った。結晶構造とBVE計算からエネルギープロファイルを見積もったところ、5種類の酸化物イオン経路が示唆された。各経路についてそれぞれの酸素サイト間のエネルギー障壁を見積もったところ、ScO6八面体の陵に沿って移動するところが最も拡散のエネルギー障壁が高く、Ba-Sc-Scできる三角形の中を通り抜ける移動経路であった。BaSc2Si3O10及びBaSc1.9A0.1Si3O9.95 (A: Mg, Ca)についてTOF中性子回折実験を行い、最適化した結晶構造からこの三角形の臨界イオン半径と導電率測定から見積もった活性化エネルギーの関係をプロットしたところ、相関があることが分かり、拡散律速かつBVE計算で示唆された箇所が拡散を律速していることが示唆された。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (39件) (うち国際学会 9件、 招待講演 7件)
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