研究課題/領域番号 |
17K17720
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
林 慶浩 東京工業大学, 物質理工学院, 特任助教 (80739029)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計算化学 / ゼオライト / シリコアルミノリン酸塩 / SAPO / 軌道相互作用 / 酸強度 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)ゼオライトモデルのサイズ依存性と、(2)シリコアルミノリン酸塩(SAPO)における酸点構造(Si-(OH)-Al基)の局所構造が、酸強度を表す指標の一つである脱プロトン化エネルギーに及ぼす影響を調べた。 (1)スーパーコンピューターの刷新により、大きなゼオライトモデルでの計算が可能になったため、ゼオライトモデルのサイズ依存性を調査した。その結果、より正確なDPE計算と軌道相互作用解析のためには、Tサイト64個を含む大きなゼオライトモデルが必要であることがわかった。この大きなモデルを用いてSi-(OH)-Al基の脱プロトン化エネルギーと軌道相互作用を再度解析した結果、前年度に得られた結論に影響は無かった。 (2)ゼオライト類似物質であるSAPOは酸点構造としてSi-(OH)-Al基を有するが、一般的にゼオライトよりも酸強度が低い。この原因を明らかにするために、種々のSAPO骨格についてDFT計算を行った。その結果、SAPOはゼオライトに比べて、Si-(OH)-Al基の脱プロトン化エネルギーの増大と、Si-O結合の伸張、Al-O結合の短縮が見られた。前年度に明らかにしたゼオライトの軌道相互作用の脱プロトン化エネルギーへの寄与の知見に基づくと、Si-O結合の伸張は脱プロトン化エネルギーの増大(酸強度の減少)に、Al-O結合の短縮は脱プロトン化エネルギーの減少(酸強度の増大)に寄与すると考えられる。全体として脱プロトン化エネルギー増大の寄与が大きい原因を解明するために、SAPOの詳細な軌道相互作用解析を次年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ゼオライトモデルのサイズ依存性を調査した結果、より大きなモデルで計算する必要があることがわかったため、そのため、平成30年度に計画していた、種々のSAPO骨格におけるSi-(OH)-Al基の軌道相互作用の解析が未達成となった。このことから、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SAPOがゼオライトに比べて、Si-(OH)-Al基の脱プロトン化エネルギーが増大する原因を明らかにするために、Natural Bond Orbital法を用いて軌道相互作用の解析を行なう。これまでの成果を国際学術誌に投稿し、受理を目指す。これらを総合して、ゼオライト触媒における酸強度の予測法の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
量子化学計算の実行のためのスーパーコンピューターが前年度に刷新され、大幅に性能が向上した。このため、計算時間により課金される計算機使用料が当初想定よりも少なくなった。また、ゼオライトモデルのサイズ依存性を調査した結果、研究の遂行により大きなモデルでの計算が必要となり、追加の計算が必要となったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、量子化学計算の実行のための計算機使用料として支出予定である。また、現在準備中の英語論文の英文校正費及び国内外の学会参加費も支出予定である。
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