研究課題
本年度は、ゼオライト類似物質であるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)における酸点構造(Si-(OH)-Al基)の局所構造が、酸強度を表す指標の一つである脱プロトン化エネルギー(DPE)に及ぼす影響を調べた。SAPOは主にAlとPから構成され、その一部がSiで置換されている。SAPOは酸点構造としてゼオライトと同様にSi-(OH)-Al基を有するが、一般的にゼオライトよりも酸強度が低い。この原因を明らかにするために、種々のSAPO骨格についてDFT計算を行った。その結果、SAPOはゼオライトに比べて、Si-(OH)-Al基のDPEの増大がみられた。このDPEの増大は酸強度の低下を意味しており、従来の知見と一致する結果が得られた。また、Si-(OH)-Al基の局所構造は、ゼオライトに比べてSAPOはSi-O結合が伸張し、Al-O結合が短縮していた。前年度までに明らかにしたゼオライトの軌道相互作用のDPEへの寄与の知見に基づくと、Si-O結合の伸張はDPEの増大(酸強度の減少)に、Al-O結合の短縮はDPEの減少(酸強度の増大)に寄与すると考えられる。加えて、ゼオライトとSAPOでは構成元素も異なっている。そこで全体としてDPE増大の寄与が大きい原因を解明するために、局所構造と元素の違いがDPEに及ぼす影響を分割する解析を行った。その結果、局所構造がDPEに及ぼす影響の方が、元素によるものよりも約3倍大きいことが分かった。局所構造がDPEに及ぼす影響には軌道相互作用が重要な役割を果たしているため、ゼオライト類似物質であるSAPOについても、構造と酸強度の相関について軌道相互作用に関する知見が重要であることがわかった。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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