大規模地震の予測精度向上に向けて前年度までに続き3つの課題に取り組み,それぞれ次の成果を挙げた. (1)活断層地震の再来間隔における変動係数のベイズ型予測の数値実験検証:活断層で繰り返される地震の将来予測において大きな不確定性をもつ再来間隔の変動係数の推定精度と将来予測精度を向上させるため,過去の活動時期や活動数に不確実性が存在する活断層における新たなベイズモデルによる推定手法および予測手法を提案した.提案手法と従来型の最尤法で,変動係数の推定精度および将来予測精度を数値実験により比較検証し,活動時期に不確定性がある下では変動係数の最尤推定量とそれに基づく予測が大きなバイアスと誤差をもち,ベイズ事後分布に基づく推定と予測はそれらを大幅に改善することを示した. (2)小繰り返し地震活動に基づく東北地方太平洋沖地震以後のプレート間滑りの逆推定:2011年東北地方太平洋沖地震を挟んだ1993~2016年の東日本太平洋プレート境界における繰り返し地震カタログに基づいて,プレート間準静的滑り速度の時空間変動の逆推定を行った.節点配置をアダプティブに調整したスプライン関数を用いた非定常更新過程モデルにより,2011年東北地方太平洋沖地震後の余効滑り速度の詳細な時空間変化や周期的スロースリップを可視化することができた. (3)前震識別に基づく新たなのマグニチュード予測モデルの開発:地震群内のマグニチュード差や時空間距離を用いた前震識別モデルに基づいて,その地震群内の次に起こる地震のマグニチュードを,Gutenberg-Richter則から外れる形で予測する手法を提案した.日本および世界の地震カタログを用いて,提案手法がGutenberg-Richter則よりも優れた予測性能が得られることを検証した.
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