本研究は、2019年の年末から中国と日本に広がった新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、日本と中国における一部の調査が中断された。そのため、研究実施期間を2020年度まで1年間延長した。延長期間の間に、前年度に実施できなかった対面調査をオンライン形式に変更したり、中国現地の共同研究者に委託したりして、柔軟な形で計画した調査を完成させた。また、これまで得られたデータを整理・分析しつつ、積極的に学会発表と論文投稿を行った。計国内学会発表8件、掲載論文1本、投稿中論文1本であった。それらの研究成果を日本と中国の協力者および世界中の幼児養育者に伝わるように、日本語、中国語、英語で発表された。詳細は以下のようである。 中国で実施したwebアンケート調査(「祖父母の育児参加に関する追跡調査」)の2回目では、2020年7月までに600部以上の回答を得られた。本調査では、協力者が専用の回答サイトから、回答直後に自分の結果(公開可能な部分のみ)及び関連の助言を見れるように設計されていた。2020年8月に、中国復旦大学大学公共衛生学院の童連准教授と連携し、童先生および童研究室の大学院生たちに依頼し、現地の幼児家庭(以前から本調査に参加していた3歳児を持つ家庭)7組を訪問し、親子及び祖父母を対象に3回目の行動観察及びインタビュー調査を実施してもらった。3年間の追跡調査の結果によって、子どもの成長が見られた一方、日常生活場面および遊び場面において、養育者と子どもとのかかわり方における変容も現われた。日本では、2020年12月~2021年1月の間に、以前から本研究に参加していた母親8名を対象に、オンライン上でインタビュー調査を実施した。インタビューによる質的分析によって、コロナ禍という社会状況下において、親子の生活における変容および祖父母の育児支援の実態がわかった。
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