研究課題/領域番号 |
17K17728
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
円谷 昭一 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90432054)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 社外取締役 / 政策保有株式 / 役員報酬 / 中期経営計画 |
研究実績の概要 |
研究初年度である2017年度はコーポレート・ガバナンス全体を敷衍し、まずは研究論点の洗い出しを主に行った。それとともに、本研究の主たる目的である政策保有株式(持合い株式)に関するデータ収集等を精力的に実施した。これらの成果は2017年12月に書籍として公表している。具体的には、政策保有株式が株主総会における安定株主化へとつながっていること、機関投資家が日本企業に対して批判的に指摘しているプロシクリカリティなどが実際に生じていることを大量データによって明らかにすることができた。現在は、どのような企業が政策保有株式を縮減(売却)しているのか、その特徴を実証的に明らかにする作業を続けている。これまでの検証の結果、政策保有株式を売却する企業の特徴としては、財政状態と経営成績が悪く、政策保有株式の保有リスクが高い、といった特徴があることを発見している。売却される銘柄の特徴については、①一方のみが持っている政策保有株式(片持ち)の場合は売却されやすく、相互持合い株式では売却される可能性が低くなる、②保有株式数が多い銘柄ほど売却されやすい、③事業会社株式と比べて銀行株式はより積極的に売却される、④銀行株式であってもメインバンクの株式は売却されにくい、といった証拠を得ている。これらの結果について、より頑健性を高めたうえで積極的に投稿していく計画でいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いくつかの論文はアクセプトに至らなかったものの、著作として1冊を発刊しており、成果として評価できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は政策保有株式を中心に実証研究を進める。具体的には、政策保有株式のメリット・デメリットの双方を定量化することを目指す。デメリット面については経営者のエントレンチメント効果、財務諸表のボラティリティの上昇などをすでに明らかにし、論文でも発表している。現在はメリット面を定量化する作業を続けている。具体的には、株式の保有先企業は(そうでない企業と比べて)取引関係が長期化しているか、安定化しているかといった巷間で言われている効果の可視化を進めている。最終的には、メリット・デメリット面をそれぞれ定量化したうえで、その効果がプラスであるかマイナスであるかを判断する計画でいる。
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