研究年度を通じて注力した分野は、政策保有株式、議決権行使である。これらは昨今のコーポレート・ガバナンス改革の核心的な位置づけであり、先行研究の蓄積も手薄な分野だからである。その他、社外取締役や役員報酬に関する研究も進め、研究ノート的な位置づけで研究結果を公表している。国内外での研究発表に関しては、まず海外において、日本会計研究学会の代表として、台湾会計学会年次大会(政治大学,2018年12月)において日本の政策保有株式の保有状況および売却状況、コーポレート・ガバナンスへの影響について発表した。また2019年度には在外研究先である韓国外国語大学における研究発表(2019年6月)、一橋大学の提携校であるインドネシア大学における研究発表(2019年9月)などを通じて海外の研究者と積極的に意見交換を行ってきた。国内においてもコーポレート・ガバナンスに関する研究意識が高まってきており、日本ディスクロージャー研究学会(2018年5月)および日本管理会計研究学会(2018年4月)の招待講演に招聘されており、実務界からの要請によって実務家向けセミナー、機関投資家とのワンオンワン・ミーティングを多数実施している。なお、研究の過程で構築したデータベース(機関投資家による議決権行使の個別結果)は、研究代表者(円谷)のホームぺージにて無償で公開しており、このデータベースを利用した論文(明田雅昭「三極化する日本企業の機関投資家との対話」『証券レビュー』2018年12月,50-68頁)も刊行されている。また、このようなデータベースは日本では筆者以外には公開していないため、海外の機関投資家等からの問い合わせも少なくない。このように、研究成果の(論文執筆以外での)社会還元にも積極的に取り組んだ。
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