| 研究課題/領域番号 |
17K17729
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| 研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
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研究代表者 |
大澤 隆将 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (40795499)
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| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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| キーワード | 民主主義 / 選挙 / オラン・アスリ / アナキズム / 平等性 / インドネシア / スマトラ |
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| 研究実績の概要 |
平成29年度においては、交付申請書において記した通り、文献研究と1か月間の現地調査を行った。また、いくつかの発表を行うとともに、論文が査読付きの国際ジャーナルに掲載された。
文献研究に関して、近年狩猟採集民の研究において活発な議論の行われている「アナキズム」に注目した文献研究を行った。狩猟採集民社会における「アナキズム」とは、集権構造の欠如、流動的な居住、個人の自立性の尊重、財産の非蓄積などによって特徴づけられる平等性の高い社会構造である。民主主義的選挙―すなわち政府の考える平等制―が導入される中で、オラン・アスリ自身が持つ上記のような社会的特徴が、項目ごとにどのように変化していくかについて研究を行う方向性を確認した。
現地調査に関して、8月1日～31日にわたりインドネシアを訪れた。カウンターパートであるアンダラス大学・リアウ大学を訪問し、ビザ取得と研究実施に伴う協力を取り付けた。加えて、現地調査対象候補となるいくつかの村落において聞き取り調査を行った。１～２年以内に選挙が行われる村落であり、またオラン・アスリが暮らす村落として、リアウ州ブンカリス県のティティ・アカール村とメランティ諸島県のクパウ・バル村があり、このどちらかで調査を行うことととした。
論文・発表として、インドネシアにおいて発行されている査読付きの人類学会雑誌、『Jurnal Antoropologi: Isu-isu Sosial Budaya』 に論文「Associating land with people」を投稿し、掲載された(Vol. 19 -No. 2)。本論文は、土地と人々のつながりに関する考察であるが、民族自決の議論が含まれており、本研究課題と関連するものである。また、インドネシア滞在中に2度の現地大学での発表を行い、現地の研究者・学生と「民主主義」に関する意見交換を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点までの進捗状況については、おおむね順調に進展している。しかしながら、平成30年度における研究計画について、大きく2つの要素により軌道修正を考えている。
第一に、長期の現地調査を予定していた村落長選挙の日程が非常に流動的である点である。交付申請書に記載した通り、平成30年(2018年)は幾つかの村落で村落長の改選年であるが、当年はインドネシア大統領選挙と重複している年でもあり、大統領選挙の実施日次第で、時期が変更されるという情報がある。2018年4月末現在、村落長選挙の実施日程は決定されておらず、「10月前後になる可能性が高い」というのが現状である。場合によっては、2019年にずれ込むのではないかという話もある。現地の情報提供者と連絡を取りながら確認し、場合によっては研究計画を遅らせる必要がある。
第二に、職場異動である。2017年の10月より、東京海洋大学から総合地球環境学研究所にフルタイムのプロジェクト研究員として異動した。研究プロジェクトに関連する研究や事務を行う必要から、当初研究計画書で述べた6か月程度の長期調査というのは難しい状況となり、より短い期間で複数回にわたる現地調査を計画している（今後の研究の推進方策参照）。付随して、当初東京海洋大学の連携研究員としてほぼすべてのエフォート率を投資する予定であったが、それを40％に引き下げた。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、大きく2つの点で調整をしていく計画である。
第一に、村落選挙の現地調査について、当初は選挙前6か月程度・選挙後1か月程度の現地調査を見込んでいた。しかしながら、選挙日程の流動性および異動に伴う時間配分の難しさを鑑み、選挙前2か月程度のフィールドワークを行い、選挙を観察、その後は2～3週間程度の短期の現地調査を数回繰り返す調査方法を構想している。例えば10月に村落長選挙開催が決定された場合、8月に現地入りし、選挙まで滞在、その後12月と3月に数週間の短期調査を行う。なお、村落長選挙が2019年に持ち越される場合には、研究資金を来年に持ち越し、同様の研究計画を遂行するつもりである。
第二に、現職場におけるプロジェクト研究とのシナジーである。現在、総合地球環境学研究所の熱帯泥炭プロジェクトに籍を置いており、リアウ州東岸のオラン・アスリの諸社会の泥炭との関係性についての研究を担当している。研究対象は同じであり、プロジェクトにおける現地調査とうまく並行させながら研究を行っていくつもりである。
加えて、本研究課題に関連し、本年の7月にマレーシアで開催されるCHAGS(国際狩猟採集民学会)のアナキズムのパネルで発表を行う予定であり、民主主義とうまく絡めながら発表を行いたいと考えている。また、みんぱくの共同研究の分担者として、アナキズム関連の研究会の申請を進めており、こちらの研究会における成果からのシナジーも見込まれる。
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