研究課題/領域番号 |
17K17732
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
内川 明佳 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 助教(特定有期雇用) (40753893)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外国人母 / 子育て / ムスリム / スリランカ / タミル / 教育人類学 |
研究実績の概要 |
本研究は、外国人子育て家庭、特に移民第一世代の母親に注目し、異国である日本社会で生活基盤を築き「子育て」をするとはどういうことなのか、彼女らの視点や解釈からの「子育て」の経験を明らかにすることを目的としている。平成29(2017)年度は、(1)先行研究の整理、理論的枠組みの検討を進め、(2)外国人住民、教育、保育等の実務を担っている関係者への聞き取り調査を実施した。また、外国人母親への聞き取り調査の実施に向け、準備を進めている。 (1)については、外国人、女性、子ども、移住・国際移動、子育て、教育・保育、多文化共生等のキーワードに係る文献、資料等を収集、閲読した。また関連するシンポジウムやワークショップ等にも参加し、特に神奈川県内において、外国人(家庭)を支援する行政、関連団体、並びにそれらの組織(個人)間のネットワーク等についても学ぶことに努めた。(2)については、(1)の活動の中で知り合った関係者等を訪れ、外国人住民の概況、行政サービス、市民活動等について幅広く把握するための情報収集を行った。その中で、近年、神奈川県内の外国人子育て家庭の多様化が進んでいること、ムスリムを両親に持つ(特に母親の滞在年数が浅く日本語を話さない)家庭が増えていること、従来の支援の枠組みでは外国人母親(家庭)に効果的にサービスを提供できない例が多くあることがわかった。そこで、「ムスリム」「スリランカ」「タミル」を本研究の新たなキーワードとして位置付け、調査を開始した。平成30(2018)年度には、外国人母親への聞き取り調査も実施し、その結果を踏まえ最終的に、外国人母親としての日本社会での「子育て」という共通体験について包括的に議論することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である平成29(2017)年度には、上の(1)、(2)に加え、(3)外国人母親への質問内容の検討及び精査、継続的・半構成的なインタビューのためのメモ・ガイドラインを作成、並びに(4)外国人母親への調査協力の依頼を計画していた。(1)及び(2)については、おおむね順調に進展しているが、(3)及び(4)については、開始したばかりであり準備を加速する。 外国人母親の視点や解釈についてはまだ十分に調査、分析することができていないが、他方、(1)及び(2)を実施することで、外国人母親を対象としたサービスや支援の現場の実態の把握、特に日本人・日本社会側が認識、指摘している課題や論点を整理することができた。さらに、神奈川県内の外国人子育て家庭をめぐる「ムスリム」「スリランカ」「タミル」という新たなキーワードを定め、研究活動の方向性をより具体化することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30(2018)年度は、外国人母親への聞き取り調査((3)及び(4))を実施するとともに、(1)及び(2)についても引き続き実施し、それらの結果とともに、外国人母親らの「子育て」の経験につき、整理、分析、考察する。特に、外国人母親たちがいかに母国とのつながりを維持、継承しているのか、その一方で、いかに日本社会・地域に適応しようとしているのか(していないのか)、できているのか(できていないのか)等に焦点をあてる。異なる価値観や習慣の狭間において、衝突、摩擦や葛藤があることは容易に予測できるが、それらにどのように対処しているのか、彼女たちが何を重視しながら「子育て」を実践し、またそのためにどのような情報、資源、ネットワークを吟味、選択、活用、駆使しているかについても、明らかにしていきたい。さらに、新しいキーワードとして「ムスリム」「スリランカ」「タミル」等にも注目し、関係者から協力を得られれば研究会等も開催し知見を広めたいと考えている。最終的に、外国人母親としての日本社会での「子育て」という共通体験について包括的に議論することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29(2017)年度に開始をする予定であった外国人母親への聞き取り調査が未実施である。そのため、旅費、人件費・謝金等が計画通りの支出にはいたらず、残額が発生した。 平成30(2018)年度は、外国人母親への聞き取り調査に加え、平成29(2017)年度中に実施し成果のあった研究活動、例えば、関連するシンポジウム、ワークショップ等への参加、外国人住民への支援・サービスの実務を担っている関係者への聞き取り調査を継続し、そのための経費に充当したい。また、関係者をつなぐ研究会を開催することも検討、計画する。
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