研究課題/領域番号 |
17K17733
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
塚原 直樹 総合研究大学院大学, 学融合推進センター, 助教(特定有期雇用) (00712704)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カラス / 行動誘発 / 害鳥 / 動物との対話 |
研究実績の概要 |
カラスによる農作物被害は年間約17億円ある他、配電トラブルや、糞害や騒音など多くの被害が報告されている。これら被害を防ぐため、様々な対策がなされているが、効果が一時的であるなど、多くが未だ解決には至っていない。 代表者は、鳴き声を使ったカラスの行動をコントロールする手法の開発を目指している。そのために、カラスの音声コミュニケーションの分析とスピーカーを用いた音声の再生による行動誘発を行ってきた。それらの手法は一定の効果は見られるものの、音声だけでは単なる脅しの域を出ず、効果の持続性に問題があることがわかってきた。その問題を解決するには、単なる脅しではなく、カラスを任意の場所に誘引させるなど、行動をコントロールする手法を開発する必要がある。そこで、申請者はカラスを騙し対話できる装置として、カラス化したドローンとカラス剥製ロボット等によるカラスの行動誘発のシステムの開発を目指している。 平成29年度は、スピーカーを搭載し、ジャイロセンサー等を組み込んだ安定飛行可能なドローンを作成した。また、翼が剥製のカラス型グライダーの開発を行い、風洞実験等による飛行性能を確かめた。また、首と尾が可動し、スピーカーを搭載した剥製ロボットを作成した。それらハードに加え、ソフト面として、日本とシンガポールのカラスの鳴き声のデータセットを構築し、それらを複数のスピーカーから再生することで、カラスを任意の場所へ誘導できる可能性を示した。 これらの成果は、NHKや各種民放番組を始め、読売新聞や日本農業新聞等の新聞社、Yahoo!ニュースなどのWebメディアなど、日本国内の様々な媒体の他、NHK WORLDや韓国、中国などの海外のメディアなど、日本内外の数十社のメディアに取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画において、平成29年度では、カラス化ドローンとカラス剥製ロボットの開発を目標とした。カラス化ドローンについては、スピーカーを搭載し、カラスの鳴き声を発しながら飛行制御可能な固定翼のドローンを作成した。また、翼をカラスの剥製としたグライダーの開発にも着手し、風洞実験等により、飛行性能を調べている。カラス剥製ロボットについては、首や尾が動き、スピーカーを搭載し、カラスの鳴き声を発するロボットを作成した。それらハードに加え、ソフト面として、日本とシンガポールのカラスの鳴き声のデータセットを構築した。したがって当初計画していた開発は概ね完了し、予定通りと言える。 平成30年度では、それらを用いたカラスの群れの行動誘発システムの構築を目指す。そのためにスピーカーから再生する、カラスの行動の文脈に沿った鳴き声のパターンについても、現時点ですでに予備実験が完了している。具体的には、ロボットを用いずスピーカーのみでカラスの行動誘発に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる平成30年度では、平成29年度に開発したカラス化ドローンとカラス剥製ロボットを用いて、カラスの群れの行動誘導を目指す。 具体的には、カラスの鳴き声を再生しながら飛行するドローンに対するカラスの群れの反応を確認する。ドローンは固定翼機の他、回転翼機も用いて、それぞれのドローンに対する反応の違いも確認する。この他、開発中の剥製翼グライダーの飛行試験を行い、実用化を目指す。 また、スピーカーからカラスの鳴き声を再生するカラス剥製ロボットを用いて、カラスの反応を確認する。剥製ロボットについては頭部や尾部の稼働に加え、嘴の開閉の動きを伴った、よりリアリティの高いロボットを開発する。 さらには、これらドローンと剥製ロボットの二つを用いて、擬似的にコミュニケーションをさせることで、カラスの群れの行動誘発が可能かどうかを確認する。これらロボットから再生する鳴き声を様々変えることで、それぞれの鳴き声に対するカラスの反応を確かめ、行動誘導に適した手法の開発を目指す。 これらと並行して、複数のスピーカーを用いたカラスの群れの行動誘導についての試験を繰り返し、実用化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は極めて少額であるため、申請した使用計画に変更はない。
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