研究課題/領域番号 |
17K17739
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
岡田 正康 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (00626492)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | glioblastoma / 膠芽腫 / phosphorylation / GAP-43 |
研究実績の概要 |
1. 膠芽腫手術標本からGAP-43のリン酸化配列をリン酸化プロてオーム解析によって数カ所同定することに成功した。そのうち二つのリン酸化配列は、げっ歯類で同定し、抗体を作製したものと同じであった。 2. 上記で発見したGAP-43リン酸化配列に対するリン酸化検出抗体を用いて、実際の13例の膠芽腫手術標本で免疫染色を行ない、現時点で壊死や微小血管増生を伴う部位の周囲の腫瘍組織で突起を伴う細胞を中心に染色されることがわかった。特に軟膜下で腫瘍増生が盛んな領域では、染色は認めず、腫瘍増殖よりは浸潤等に関わっている印象を持っている。 3. 膠芽腫の培養細胞における検討では、血清の有無に関わらず、GAP-43自体はwestern blottingで検出可能であり、上記リン酸化検出抗体では検出されなかった。リン酸化を起こす条件について検討した結果、ある種の酸化ストレスによって検出される場合と、培養時の基質によって検出される場合の二種類を確認しているが、これについては、現在細胞の種類を増やし、現在検討を重ねている。 4. 初年度であったが、培養細胞(glioma細胞)をヌードマウスの脳に移植したxenograft modelの作製を開始した。7種類のglioma細胞を移植し、2018年3月まで4種類の細胞で腫瘍形成を確認した。今後このxenograft modelを用いて、GAP-43の発現とそのリン酸化の発現等を確認する予定である。 5. 遺伝子改変による培養細胞のリン酸化不活化株の作製は、GAP-43がリン酸化を起こす培養条件の確立ができた時点で行う予定である。これを用いて、in vitro、in vivo実験を予定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量分析、抗体染色の両面から膠芽腫の手術標本におけるGAP-43のリン酸化が確認できたことのみならず、glioma細胞株が培養条件でリン酸化を発現する可能性を検討し、いくつかの条件を見出した。当初ここまでの結果を予想しておらず、GAP-43がある条件によってリン酸化できるいうことは、手術標本でリン酸化が確認できる局在の意義や機能を検討する上で非常に重要な成果であると認識している。検討サンプルの数を増やし、さらに確実な成果につなげたい。 また当初の予定では、マウスへの脳腫瘍のxenograft modelの作製は平成30年度を予定していたが、動物モデルの作製は時間を要すことが予想され、平成29年度中に作製を開始した結果、既に評価可能な動物モデルを作製できた。平成30年度は、この脳腫瘍の動物モデルを解析し、GAP-43のリン酸化の機能を評価するモデルとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
GAP-43のリン酸化は、これまで正常神経細胞で検討されているのみであり、我々の発見したリン酸化配列は、神経細胞はもとより、膠芽腫においてもリン酸化されていることを確認した。このGAP-43のリン酸化配列は、これまで論文報告のない配列であり、現在神経細胞については論文投稿中である。腫瘍細胞においても、同様に存在する可能性が高い配列であるため、さらに検討サンプルを増やし、慎重に結果を検討し、報告したい。 また培養細胞において、GAP-43がリン酸化を起こす条件検討は、実際の生体内での機能を検討する上で、重要な意義をもつと考えている。従って、数多くのglioma細胞株で検討し、最適な条件を見出し、病理像との関連を見つけ出したい。 さらにGAP-43のリン酸化を引き起こすキナーゼは、正常神経細胞で発見したものは現在論文投稿中である。このキナーゼとGAP-43のリン酸化を脳腫瘍細胞においても当てはめて検討することで、GAP-43のリン酸化制御を膠芽腫の新規治療法として検討できるため、GAP-43のリン酸化のキナーゼの同定にも挑戦する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に購入を予定していた試薬や器具が、前年度内に納入されなかったため、次年度に納入された時点で前年度の予算を用いて支払う予定である。
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