研究実績の概要 |
平成29年度に膠芽腫手術標本からGAP-43のリン酸化配列をリン酸化プロテオーム解析で数カ所同定することに成功し,リン酸化を検出する抗体を作製した。脳腫瘍において確認できたGAP-43のリン酸化部位は,もともとげっ歯類における正常神経細胞の成長や再生に関わる因子として研究を重ね,平成30年度に論文公表できた(Kawasaki A*, Okada M*, Tamada A*, et.al.(*:These three authors contributed equally) iSCIENCE 4, 190-203, 2018)。平成30年度はGAP-43 T172リン酸化検出抗体(pT172)を用いた組織染色,ウエスタンブロティング等の生化学実験,さらに培養細胞実験を進めた。 (1)悪性Gradeが異なる神経膠腫に対する組織染色を行い,発現頻度や部位を検討した。(2)患者由来膠芽腫細胞を用いた培養実験でGAP-43の発現とある条件下でのリン酸化発現を確認した。(3)さらにその細胞をヌードマウスの脳へ移植するXenograftmodelの確立し,評価を開始した。さらに(4)GAP-43発現腫瘍細胞へのcrispr cas 9 systemによるGAP-43のリン酸化不活化型ノックイン細胞作製に着手した。 平成30年度の研究の結果,Gradeの低い腫瘍細胞では正常神経にGAP-43のリン酸化発現を組織学的に確認できるも,腫瘍細胞での発現は少ないことが判明し,当初の予定通り,最も悪性度の高い膠芽腫に集中して検討を繰り返している。 こうして神経の再生や発生段階で神経軸索が伸長する際にリン酸化頻度が高いタンパク質として我々が見出したGAP-43の新規リン酸化部位のリン酸化に着目し,そのGAP-43のリン酸化と膠芽腫細胞の細胞突起構造形成や治療抵抗性との関連についてさらに明らかにしてゆきたい。
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