研究課題
これまで報告された研究では,膠芽腫の細胞突起形成に関わる神経成長関連タンパク質(GAP-43)を細胞実験において減少させることで,悪性脳腫瘍で最も難治である膠芽腫における放射線や化学療法に対する治療感受性を高めることが解明されていたが,明確なGAP-43タンパク質の機能は未知であり,そのためGAP-43を制御する観点で実際の治療に応用する方法は未解明のままであった.研究代表者は,本研究において膠芽腫におけるGAP-43の機能を探る上で重要なGAP-43のリン酸化部位の同定に成功した.このリン酸部位の同定は,リン酸化プロテーム解析を用いた得られた世界初の結果である.そのGAP-43リン酸化検出抗体に成功し,膠芽腫の病理標本を解析し,腫瘍細胞においてGAP-43のリン酸化発現を組織学的,生化学的に証明できた.さらにヒト胎児腎細胞HEK293T細胞にヒト型GAP-43タンパク質を強制発現させる系を作成した.今回発見したGAP-43の新規リン酸化部位をリン酸化させる責任キナーゼとしてin silico解析から予想されたMAPKのうちJNKが,責任キナーゼであることを発見した.JNKのリン酸化についても膠芽腫病理標本において,GAP-43のリン酸化と同様に腫瘍細胞に発現を確認できた.JNKリン酸化を阻害する薬剤は,すでに開発されており,JNK制御によるGAP-43制御という治療方法の基礎を築くことができた.本研究により,膠芽腫の細胞突起形成と関わるGAP-43について新規リン酸化部位とその責任キナーゼを解明した.
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