研究課題/領域番号 |
17K17743
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
韋 冬 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (70610418)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 長さ計測 / 周波数フィルタ / 繰返し間隔長 / 距離情報特定点 / 位相クロス点 / 屈折率 |
研究実績の概要 |
光周波数コムを用いた長さ計測技術が必要となる。隣接したパルスの繰り返し間隔長(以下、間隔長)を用いた方法が提案されている。波長は真空中の光速度に介してレーザーの周波数に比例している。間隔長は真空中の光速度に介して光周波数コムの繰返し周波数に比例している。波長はメートルの実現手段に用いられてきた。この類似性から、間隔長もメートルの実現手段に使える。
任意の距離を「繰返し間隔長×(整数+端数)」と表現できる。間隔長を用いた長さ計測を実現するには、実数部と端数部の計測が必要である。今年度は、実数部を計測するために、空間分割装置を構築した。空間分割装置と時間分割装置の安定性に関する予備実験を行った。また、距離情報特定点(つまり、包絡線ピーク点と位相クロス点)のノイズ耐性を調べた。さらに、包絡線のピークと位相クロス点が一致することを用いて周波数フィルタの自動設定法を提案した。複数の計測対象を想定し、その表面計測を行った。表面形状が長さ計測の結果に与える影響を検討した。
空気中で計測した長さから空気の屈折率による影響をなくすために、計測値を真空中の長さに変換する必要性がある。この変換を実現するには、経験式がよく使われる。経験式では、空気屈折率を変数(波長、温度、湿度と気圧)の関数としている。波長の変動によって、不確かさはどのぐらい変動するのかを確認した。また、空気の群屈折率を簡単に計算できる方法を提案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長さ計測を実現するために、まず、空間分割装置を構築した。空間分割装置と時間分割装置の安定性に関する予備実験を行った。空間分割装置の有用性を確認できた。このことを2018年度精密工学会春季大会学術講演会で報告した。また、位置決定の精度を上げるために、包絡線ピーク点と位相クロス点のノイズ耐性を調べた。その結果を第65回応用物理学会春季学術講演会で報告した。さらに、計測の自動化を実現するために、包絡線のピークと位相クロス点が一致することを用いて周波数フィルタの自動設定法を提案した。その結果を2018年度精密工学会春季大会学術講演会で報告した。最後に、計測対象を拡大するために、複数の計測対象を想定し、その表面計測を行った。計測結果をAsian Society for Precision Engineering and Nanotechnology 2017で報告した。
計測の不確かさを見積もるために、波長の変動によって、不確かさはどのぐらい変動するのかを確認した。その結果をOptics & Photonics Japan 2017 (OPJ2017)で報告した。計算の簡便化を実現するために、空気の群屈折率を簡単に計算できる方法を提案した。その結果をThe Twelfth Japan-Finland Joint Symposium on Optics in Engineeringで報告した。また、雑誌論文としても採用された。
|
今後の研究の推進方策 |
周波数フィルタの自動設定法をまとめ、SPIE/COS Photonics Asia 2018で発表する。また、雑誌論文に投稿する。これは、すべてのパターンを計算する総当たり戦である。そのため、現在の計算効率が悪い。信号対雑音比に注目し、戦略的な探索アルゴリズムを考案する。2019年度精密工学会春季大会学術講演会で発表する。
干渉縞信号にノイズが乗る。現状では、信号をフーリエ変換し、周波数領域で信号とノイズを区別する。問題は、信号スペクトルに入ってあるノイズはもう除去できない。対策は計測回数を増やし、その平均値を求めることしかない。位置計測に使えるパラメータを再度検討する。複数のパラメータを用いた計測の可能性を検討する。第66回応用物理学会春季学術講演会で報告する。雑誌論文を投稿する。
環境変化によって、干渉信号の相対的な位相がずれる。計測システムの測長精度の低下となる。外乱や揺らぎなどに対し、個々の波長の感度係数が異なることに注目する。可変フィルタにより、計測環境に最適化した波長を選択できるようにする。波長選択により、計測レンジの最大化や分解能の最大化などの異なる計測要求にも対応可能となる。数値計算と実験で検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の概念設計および実行可能性検討結果および、基本原理の確認を元に、システムを構築する。精度の向上を実現し、計測の実時間性を持たせるため、高い周波数帯域を持つオシロスコープを購入する。 既存の光周波数コム光源に対して、光学部品、機構部品などを追加することで、精度評価および精度向上の検討を行うことができる。光学部品では、いくつかの種類の光反射体を購入し、このシステムに適した反射体の仕様を確認する。さらに、システム全体の位置などの校正を行うため、装置設置などの構造部品を購入する。 いずれの年度にも、本研究の研究成果を社会・国民に分かりやすく積極的に発信するために、SPIE/COS Photonics Asia 2018、Optics & Photonics Japan 2018 (OPJ2018)、2019年度精密工学会春季大会学術講演会や第66回応用物理学会春季学術講演会など国内外での成果発表の旅費などを計上した。
|