本研究の目的は、保育者がもつ特定の家族背景に対するスティグマの様相を明らかにし、保育におけるスティグマ是正プログラムを提案することであった。2022年度においては、これまでに作成したプログラムの実施可能性を検討した。保育者を志望する学生を対象として、プログラムを試験的に実施し、フィードバックを得た。今後は、フィードバックを踏まえたプログラムのさらなる改良と、保育現場への応用が課題である。また、スティグマ是正プログラムの理論的背景として、ネガティブ・ケイパビリティの有用性に着目したため、保育においてこれら理論を適用するうえでの妥当性を検証するための実態調査もあわせて実施した。研究期間全体を通じて、保育者のもつスティグマの背景についての調査を実施し、関連文献の整理・分析と、試行的な実践により、保育現場において実践可能なスティグマ是正プログラムの試案を準備できた。プログラムの作成と実施は、当初の計画通りには進んでおらず、検証においても不十分な点はみられるが、保育現場における偏見やスティグマの問題への対応と保育者としての専門性の向上を図るうえでは有益な資料を得たといえる。また、保育現場におけるスティグマの問題については、二度の実態調査を経て、これまでに十分に検討されてこなかった実態を把することができ、今後の研究につながる成果となった。
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