令和元年度は、機能性トリテルペンの一つであるオレアノール酸の、がん悪液質モデルマウスに対する筋萎縮抑制効果を検討した。また、そのメカニズムについてもオレアノール酸の抗炎症作用および耐糖能改善作用に着目して検討した。 マウス(C57Bl/6、6週齢、雄性)に3 x 10^6個のルイス肺がん細胞(LLC細胞)もしくはvehicleを腹腔内に投与した。それと同時に、0.05%オレアノール酸を含む食餌または普通食を自由摂餌させ、10日後に解剖し、悪液質の各種症状を検証した。がんを移植後10日間の体重変化においては4群間で差異は見られなかった。普通食を与えたマウスは、がんを移植することで10日後に握力の低下および腓腹筋の重量の減少が見られた。一方で、オレアノール酸混餌食群においては、握力や腓腹筋の重量はがんを移植しても変化しなかった。がん移植群では糖代謝の異常により空腹時血糖値の上昇がみられるが、オレアノール酸による影響は見られなかった。また、がん移植により普通食群の血中IL-1β濃度が有意に上昇したが、オレアノール酸混餌食を与えた群はその上昇が抑制された。一方で本モデルでは、がん移植によって血中TNF-α濃度に対する影響は見られなかった。 がん悪液質モデルマウスの筋委縮に対して、オレアノール酸摂取が有効性を示すことが明らかとなった。そのメカニズムとして、オレアノール酸が炎症性サイトカインの一つであるIL-1βの増加を抑制していることが関与していることが示唆された。
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