本年度は,本研究の最終的なまとめとして,主として外国扶養裁判の承認と扶養の準拠法との関係について検討した。ここでは,外国で発生した扶養料の回収の簡易化という観点から,関連するわが国の現行法である「扶養義務の準拠法に関する法律」について,ハーグ国際私法会議が策定した関連条約を踏まえて,立法論的提言を目指した。なお,この検討の過程で,2022年刊行予定の,Japanese Yearbook of International Law 65巻において,「国際的な扶養料の回収」を仮題として,英語論文を執筆する機会を頂戴したため,上記関係についての研究成果は同論文の公表により明らかにすることとする。 研究成果の公表としては,昨年度来検討していた扶養料発生の前提問題となる親子関係の成立に関するものがある。近時民法の改正議論が活発である一方,国際私法の観点からの議論が乏しかったことから,個別報告として,「平成28年民法改正及び近時の嫡出推定規定改正の動きと国際私法」(北陸国際関係私法研究会,2020年9月)との報告を行い,これをベースとした上で「血統の混乱(turbatio sanguinis)の回避を巡る近時の展開と国際私法」(富大経済論集66巻1・2・3号,2020年12月)とのタイトルの論文を年度内に公表した。これらにおいては,主に,再婚禁止期間と嫡出推定に焦点を当て,国際私法上の現在の課題を明らかにした上で,民法改正後の対応や国際私法の立法論について検討を行った。
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