研究課題/領域番号 |
17K17750
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
友原 啓介 九州大学, 基幹教育院, 助教 (40711677)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多成分系 / DMSO / 摂動 / 非特異的酵素阻害剤 |
研究実績の概要 |
1.多成分系を基質とした分子変換 本研究は,薬用植物抽出エキスを基質とした合成反応により,新規天然物様化合物を一挙に創製し,新規創薬シーズを創出することを目的とする.本年度は,薬用植物「ガジュツ」「ボタンピ」「ショウキョウ」の酢酸エチル抽出エキスを基質としたBucherer-Bergs反応により得られた新規ヒダントイン類のアルドースレダクターゼ阻害活性を評価した.その結果,中程度の阻害活性 (67-295 μM) を有する新規アルドースレダクターゼ阻害剤を創出することができた.現在,阻害活性発現機構を以下の方法により評価中である. 2.DMSO摂動効果を利用した分子間相互作用解析研究 研究代表者はこれまでに,DMSO摂動条件下のヒアルロニダーゼ阻害活性評価系において,DMSO濃度依存的な阻害活性の低下により,酵素活性部位に対して非特異的な阻害剤を見極めることができる新規分子間相互作用解析法を開発した.本年度は,本手法の一般性と適応範囲を検証した.Frequent hittersを含む構造的に多様な18種類の評価化合物を選定し,DMSO摂動条件下,β-lactamase (Enterobacter cloacae及びBacillus cereus 569/H9由来)並びにα-chymotrypsinに対する阻害作用を評価した.一例として,quercetinはβ-lactamaseに対して阻害作用を示したが,DMSO摂動条件下で阻害活性が低下し,活性部位非特異的な阻害剤としての挙動を示した.一方,基質類似の阻害剤はDMSO摂動条件下でも一定の阻害作用を示し,活性部位特異的な阻害剤の挙動であった.また本評価系で鍵となる失活状態にないnon-productiveな酵素の存在を,蛍光,円二色性(CD),赤外(IR)の各種分光分析法を用いて示し,本手法の概念を立証することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多成分系を基質とした合成反応による新規創薬シーズの創製研究については,得られた新規天然物様化合物の薬理活性評価を行い,新規アルドースレダクターゼ阻害剤を創出することができた.一方で,Ugi反応等の反応系への応用については,モデル基質を用いて反応条件の最適化を行っているところである. DMSO摂動効果を利用した新規分子間相互作用解析法の開発研究については,酵素とその阻害剤を用いた例証研究により,本手法の一般性を立証することができた.また,各種分光分析法を用いて,本評価系で鍵となるnon-productiveな酵素種の存在を示すこともでき,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,当初の研究計画通りに進める予定である.当初の計画に加えて,DMSO摂動効果を用いた分子間相互作用解析研究については,受容体とそれに作用する有機化合物の分子間相互作用解析研究,および分子動力学計算を用いたDMSO摂動条件下におけるタンパク質の立体構造変化の予測研究を展開する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は,当初の計画通り研究を進めることが出来た.一部については,当初の計画以上の進展があった.主として物品費に次年度使用額が発生したが,これは酵素阻害活性評価系のプロトコールを見直したことと,評価系のスケールを小さくしたことにより,より効率的にスクリーニングを実施することが出来たためである. 次年度使用額については,DMSO摂動効果を利用した分子間相互作用解析研究の発展的研究課題として,核内受容体とそのリガンドの分子間相互作用解析研究,並びに分子動力学計算実施のための物品購入費として使用する.
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