学校教育や地域理解等へ力を持つはずの学校資料が現在消失の危機にある。学校所在の考古歴史資料をいかに保護し、活用するか。その保護・活用の基盤となるべき学校資料の資料論を構築を目指して、本研究では京都府の学校を対象として事例研究をおこなった。この研究では、学校にどのような考古歴史資料が所在するのか、それはどのように記録化・教材化していくことができるか、資料にはどんな価値が見出されてきたのか等を質問票やインタビュー、実地調査、さらに学校との連携実践などによって検討をおこなった。 その主な成果としては、近代的学校制度がスタートした明治期から学校と考古学や人類学はかかわりを持っており、そのことを示す具体的資料として考古遺物だけではなく、人種模型標本や各種考古模型に注目すべきであること。また同じく明治期以降から現在に至るまで学校内には資料を収蔵・展示する学校内歴史資料室ないし博物館と言える施設がかなりの学校で作られており、その再整備が博物館関係者や考古学者の新たな学校との関係づくりの場になると考えられること。資料の学校の授業での利用については、社会科や総合学習の時間だけではなく、書道や情報教育の時間など、学校との緊密な連携によって資料の活用可能性の幅は従来よりも広がりうることなどを実践的に示すことができた。 またこれらのパブリック考古学的・実践的研究を踏まえて、学校資料活用のハンドブックを刊行することができた。この内容は本研究の目的である学校資料の扱い方やその特質や価値を示した学校資料の資料論構築に寄与するものである。さらにこの研究を通じて、学校資料を専門的に議論し情報共有をおこなう場としての研究会を創立できた。本会は、また学校という個人情報などの扱いにかかる倫理規定の構築も検討しており、これも学校資料論の構築に貢献できる。以上の成果から、本研究の継続は強く期待されている。
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