研究課題/領域番号 |
17K17754
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
鈴木 真太郎 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員研究員 (80767757)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然人類学 / 考古人骨研究 / 古代マヤ / 古代メソアメリカ / 古代アメリカ / 古代糧食文化 / 紀元前 |
研究実績の概要 |
平成29年6月から11月まで、グアテマラに滞在し、同国デルバジェ大学、同国立歴史学人類学研究所(IDAEH)の施設にて、南海岸地方由来の考古人骨群の巨視骨学鑑定、並びに同位体分析の為の試料採取を行った。シンカベサス考古人骨群:1980年代の先行研究によれば30体前後の個体数ということであったが、その実100体以上を含む非常に大きな考古人骨群であった。保存状態も当初考えられていたよりもずっと良好で、本研究における中心的な役割を果たす考古人骨群となった。平成30年4月現在、全個体の作業を終了している。まだ暫定的なものではあるが、以下のような非常に興味ぶかい所見が得られた。1)歯牙う蝕のパターンと損耗状況の分析から、先行研究とは明白に異なる食糧事情が認められ、紀元前の海岸地域(例:レイノサ遺跡)というよりは、より時代が新しい古典期(紀元後200年から900年頃)と呼ばれる時代の内陸部のものに近い食糧事情(例:コパン遺跡)が示唆された。2)多くの個体に戦闘行為に関わると思われる暴力の痕跡が認められた。3)現在までマヤ文明圏には存在しないとされていた「環状式(Annular Type)」と思われる特殊な頭蓋変形を伴う個体を複数体確認した。4)壊血病を罹患していると思われる個体を複数体確認した。バルベルタ考古人骨群:事前確認の通り約30体の個体を含む考古人骨群であった。シンカベサス考古人骨群に比べ保存状態に優れず、あまり画期的と呼べる所見を得ることはできなかった。しかし、歯牙による食糧事情の考察に関しては、シンカベサスとはまた異なり、よりレイノサに近い紀元前の海岸地域らしい様相が見て取れた。最後に、以上を踏まえて、平成30年4月現在の所見を総合すると、紀元前の南海岸地方にはライフスタイルを異にする複数の集団が割拠していたようである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題における調査のうち最も時間を要する作業である現地での巨視骨学鑑定の全行程を完了している為、課題の進捗は概ね順調な状況を示していると判断する。平成30年度の初頭(5月中)には採取した同位体分析の試料を関係各国に輸送する予定であり、年度の中頃までには前述した全個体情報のデータベース化と統計分析が完了、年度後半には課題の最終的な考察がまとめられるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は安定同位体分析と採取データのデータベース化、共時集団内、並びに通じ集団間での統計分析を行う予定である。特にシンカベサス考古人骨群で得られた所見に関し、他地域・他時系列の考古人骨群と詳細に比較検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度から繰り越した1,300,000円は同位体分析の為の業務委託費用として30年度に使用する予定である。29年度中に同位体分析費用を行使しなかった理由は、グアテマラから試料を輸出する手続きに時間を要したからであり、30年度の初頭には執行する予定である。
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