研究課題
界面に存在するナノ分子鎖は様々な界面現象の発現に重要な役割を果たしている。本研究では、3次元走査型原子間力顕微鏡(3D-AFM)をもとに、界面に存在するナノ分子鎖の立体構造・空間分布を1分子スケールで実空間計測できる新しい手法を確立する。これまで(H29年度、2017年度)に鎖長、親・疎水性や構造自由度の異なる界面分子鎖モデルを合成し、HOPG基板上に垂直配向していることを確認した。そこで本年度(H30年度、2018年度)は、界面に配列させた分子鎖モデル間の相互作用を抑制させるため、また近接した分子鎖間の相互作用が界面分子鎖の構造やダイナミクスに与える影響を正確に理解するために、HOPG基板へ固定化するための基点構造にスペーサー部位を導入した界面分子鎖モデル分子を設計後、合成・精製した。またHOPG基板上に固定化基点構造の自己組織化単分子膜を形成した後に、架橋反応により分子鎖モデルを界面に配列することを検討した。固定化基点分子の単分子膜は有機溶媒中で溶解するため、水溶液中における種々の架橋反応を検討し、界面分子鎖モデル構造を固液界面に配列させる条件を確立できた。これらの成果により、種々の鎖長、親・疎水性や構造自由度の異なる界面分子鎖モデルをそれらの分子間隔を制御しながら配列できるようになった。今後、さまざまな計測条件で3次元分布の可視化を行い、計測メカニズムの解明や3D-AFM計測の改良を進める。
2: おおむね順調に進展している
界面分子鎖モデルを精密にデザインするための分子設計や単分子膜形成の条件の確立を達成できており、おおむね順調に進展していると考えている。今後、種々のカンチレバーを用いたダイナミクス計測の定量化などに向けて、構造自由度の異なる分子鎖モデルを構築できた、
共振周波数の異なるカンチレバーを用いて周波数変調モードによる3次元AFM計測を実施し、鎖長や親・疎水性、構造自由度の違いが計測で得られる保存力・散逸力のそれぞれの信号にどのように現れるか検証する。この議論から、界面分子鎖のダイナミクス計測の定量化や可視化メカニズムの議論を進展させる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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