研究課題/領域番号 |
17K17761
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
永井 健 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (40518932)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アクティブマター / 集団運動 |
研究実績の概要 |
本年度はまず、Self-propelled rodモデルと同じ対称性を持つ数理モデルを用い、C. elegansの集団運動に関する研究を行った。実験に対応するモデルのパラメータを推定するため、C. elegansの回転速度のゆらぎの大きさと相関時間を見積もる方法を開発した。推定したパラメータを用いたシミュレーションの結果、集団運動に見られる渦構造のサイズ分布がモデルでよく再現されることを明らかにした。また、対応する付加項を数理モデルに追加すると、集団運動の湿度依存性をよく再現する。オプトジェネティクスを用いて集団運動に光刺激応答性をもたせた場合も再現できる。これらの結果は、C. elegansはSelf-propelled rodの良いモデル実験系であることを示唆している。 また、上と同様のモデルを用いてガラス板に固定されたダイニンに駆動される微小管の集団運動を研究した。ダイニンの種類やダイニン密度を変え、C. elegansの運動解析に用いた方法で微小管の運動に対応するモデルのパラメータを推定した。得られたパラメータを用いると実際の微小管の集団運動がよく再現されることがわかった。 C. elegansは生き物であり微小管は無生物である。また、C. elegansの体長は500マイクロメートルほどであるが、微小管は10マイクロメートルほどの長さである。上記の2つの結果をまとめると全く異なる2つのアクティブマターの集団運動が様々な条件下でほぼ同一の数理モデルにより記述されると言うことが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度中に自発運動ゲル同士が吸着し、アグリゲーションを作ることが明らかになった。そのため、当初の研究計画にあった自発運動ゲルの集団運動に関する研究をすすめることができなかった。 分子モーターに駆動される微小管については回転速度の揺らぎの解析法を開発できたため、集団運動の理解が大きく進んだ。しかしながら、解析法の開発に時間がかかったため当初の研究目標であった長距離配向した集団運動の解析は進まなかった。 C. elegansについては29年度に研究予定はなかったものの、微小管と同様に新規の解析法の開発により集団運動の理解が大きく進んだ。数理モデルとの対応性が明らかにできたので、シミュレーションから長距離配向秩序を実現するために必要な運動特性に目星をつけられるようになった。 これらの状況を総合すると概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は29年度に進めることができなかった自発遊泳ゲルの集団運動の観察のため、ゲルの表面を加工し、アグリゲーションの防止を試みる。Poly-L-Lysineなどを通じ荷電相互作用を用いて表面に高分子を付ける予定である。 また、29年度に行う予定であった微小管の長距離配向秩序相の解析を進める。開発した解析法とモデルの数値シミュレーションを組み合わせ、長距離秩序相を得るために必要なダイニン濃度を予想する。予想されるダイニン濃度での集団運動を解析し、配向の相関距離を見積もり、長距離秩序であるかどうかを判定する。 当初の計画において30年度に行う予定であったC. elegansの様々な変異株の集団運動の観察もすすめる。湿度や光の強さなどの周辺環境に対する孤立した個体の運動の依存性も調べる。これらの結果から長距離配向秩序が生じるために必要な条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当遺書予定していたよりも物品購入費が少なかったため次年度使用額が生じた。本年度の残額は30年度の試薬購入に用いる予定である。
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