ミリ波放電では入射ミリ波波長に依存したフィラメント構造と呼ばれる自己組織化された構造が現われる。その構造は気体の電離閾値に比べ入射電力が高い超臨界条件と、入射電力が低い亜臨界条件で異なる。本研究では303 GHz の大電力ジャイロトロンを光源として用い、ミリ波放電の放電構造を高い時間・空間分解能で調べた。その結果、超臨界条件での1/4波長構造から亜臨界条件での櫛状プラズマ構造へ変化する過程の観測に世界で初めて成功した。さらに櫛状プラズマ構造について、プラズマ表面での回折波を計算し横方向の定在波形成が構造を決定するとの理論的説明を与えた。このハイスピードシャッターカメラを用いた入射ミリ波の電界面と磁界面での放電構造形成の観測結果は国際学術誌Scientific Reportsに論文として出版した。 シャドウグラフ法による観測ではミリ波放電による衝撃波形成過程の詳細な計測を行うことができた。当初予定していたジュール加熱についての検討までは進めていないが、超臨界条件と異なり亜臨界条件では電離波面は衝撃波通過後の気体中を進展していくのでこの計測は重要である。また衝撃波形成後の観測により、集光ミラーによって反射した反射衝撃波の存在が明らかになった。反射衝撃波の伝播速度は電離波面進展速度より速いため、反射衝撃波は電離波面に追いつくことができる。現在、数値流体計算により、実験で得た電離波面進展速度を入力として用いて衝撃波と電離波面周辺の流体的挙動の解析を進めている。
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