エレクトロスピニング法によって作製されたナノ繊維材料は、細くなるという形状的な変化だけでなく、その分子配向性が変化することが知られている。以前に研究代表者は、エレクトロスピニング法により作製したナノファイバー作製の過程で延伸力を受けないナノファイバー(未延伸ナノファイバー)と延伸力を受けたナノファイバー(延伸ナノファイバー)の表面構造を原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。その結果、どちらの繊維も表面の凹凸形状には大きな違いが見られなかったが、AFM位相像において、位相の異なる分子配向が観察された。本研究では、ファイバー作製時の延伸により表面構造が変化するナノファイバーを分子吸着の足場としてみることにより、その繊維表面の分子配向構造部上に機能分子を修飾することで、分子を繊維表面に一次元配列する技術の開発を目的としている。コレクターを2000 rpmで回転させて作製したポリウレタンナノファイバーに金ナノ粒子(AuNPs)を吸着させ、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察をした。TEM像よりAuNPsは直線的に並んでおり、その幅が15~20 nm程のため、PUのハードセグメントの大きさとほぼ同じであることが分かった。この成果については、査読付国際学術論文に受理された。さらに触媒作用を有した白金ナノ粒子をナノ繊維表面へ配列させ、その機能を評価した。その結果、白金ナノ粒子が配列することで反応性が向上することが、示唆された。
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