研究課題
遺伝性脊髄小脳変性症の原因遺伝子探索を進めた。家系1においては末梢神経障害を呈している患者と痙性対麻痺を呈している患者が混在していた。遺伝子解析を行ったところ2つの原因遺伝子がそれぞれの症状を起こしていることがわかった。またそのうちの一つは新生の突然変異であり、その遺伝子が痙性対麻痺の原因であることを確認した。この遺伝子はアミノ酸の合成の酵素である。この遺伝子変異により一部の患者ではアミノ酸が低下していることが報告されており、アミノ酸の補充により症状を改善できる可能性がある。家系8においては候補遺伝子を2つに絞り込んでいた。このうちの一つが精神発達遅滞、不随意運動、痙性対麻痺、小脳失調を起こすことが報告されてしまった。本家系以外の遺伝子解析例に検索範囲を広げて遺伝子変異を抽出したところ、他にも3家系同一遺伝子の変異を伴う家系を見出すことができた。しかしながら、この3家系の臨床像と先に報告されている臨床像とに相違点がある。現在細胞内局在などにより症状の差異が出現する可能性について検討するための準備を進めている。家系2は連鎖解析により絞り込んでいた原因遺伝子候補の確からしさを検討した。しかしながら候補遺伝子の同定にはいまだ至っていない。リンパ芽球の収集を進め、機能解析による原因の同定について検討している。家系7については遺伝子解析により共通の遺伝子変異の抽出を進めた。候補の絞り込みは進んでいるものの、同定には至っていない。家系3から家系6に関しては近親者の追加はなく、他の原因遺伝子候補との比較を行ったものの、同定には至っていない。
3: やや遅れている
本研究では複数家系の原因遺伝子の同定を行っている。もともと候補が絞られていた家系においてはさらに絞り込みを進めた。またもともと絞り込みが済んでいた家系の一部については原因遺伝子を同定するに至った。これらの遺伝子はアミノ酸の合成にかかわる遺伝子と、細胞内輸送にかかわる遺伝子と考えられている。これらの遺伝子変異により疾患を起こすことが確認されているものもあった。しかしながら、同定した遺伝子変異の病原性については確認が取れていない。そのため一部の遺伝子変異に関しては細胞培養を用いて機能解析を行う予定であったが、原因遺伝子の同定に重きを置いていたため、細胞培養などによる病原性の確認や介入による細胞内動態の変化についての観察に関しては遅れている。
同定した遺伝子に関しては今後さらなる解析を進める予定である。具体的には1つには他家系の収集がすでに進んでおり、合計で4家系の集積に成功している。この家系の解析を行い、遺伝子変異と臨床肖像の相関について検討する。もう一つの遺伝子に関しては他家系は収集できていないものの、他疾患として報告されてきていたこともあり、遺伝子変異と臨床肖像の相関を確認していく。候補遺伝子の抽出のみの家系においては、同様の臨床症状を呈する家系を集積しさらに遺伝子の絞り込みを行う。また同定された遺伝子の細胞内動態を確認し。治療ターゲットの抽出を試みる。
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