研究課題
・ヒトのBCP-ALL臨床検体におけるASNS遺伝子のメチル化状態を、公開データベース(GSE49031)を中心に解析した。・その結果、小児BCP-ALLにおける代表的な核型とASNS遺伝子のメチル化状態との関連が明らかとなった。具体的には、細胞株を用いたin vitroの解析で高いL-asp感受性を示した高メチル群(mean % methylation >67%)は、予後良好群(high hyperdiploid, ETV6-RUNX1)において351例中69例(19.6%), 中間群(TCF3-PBX1+, iAMP21, and others)において258例中25例(9.7%),予後不良群において55例中1例(1.8%)であった。これは予後因子としての核型に分子細胞生物学的な背景を与える治験であった。一方、メチル化率が異なる背景としてSt.Jude小児病院の公開データベースを用いて核型とDNMTs遺伝子、TETs遺伝子との関連性を解析したが、ASNS遺伝子メチル化率の差異を説明しうる知見は得られなかった。これは今後の課題といえる。・また、ヒトに限らずマウスにおいてもTCF3-PBX1ノックインマウスにおいてはASNS遺伝子16例のほとんどが、BCR-ABL1トランスジェニックマウスでは4例すべてが低メチルを示す一方で、Etv6-RUNX1ノックインマウスにおいては13例中3例に高メチルを示す例が見られた。すなわち、ETV6-RUNX1陽性ALLにおけるASNS遺伝子は、白血化の過程でメチル化を受ける可能性が示唆された。・これらのことから、ASNS遺伝子のメチル化状態は薬剤感受性のマーカーとして用いうることだけでなく、がん治療の分子細胞生物学を理解する上でも重要なテーマと考えられた。
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