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2017 年度 実施状況報告書

電気化学発光による新規覚せい剤検出原理の確立とスクリーニング分析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K17776
研究機関信州大学

研究代表者

高橋 史樹  信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (40754958)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード分析化学 / 電気化学発光 / 電気化学分析 / 法科学
研究実績の概要

薬物の乱用は依然として我が国の大きな社会問題の一つであり、検体数の増加に伴い分析の簡便化、迅速化が大きな課題となっている。本研究では、電気化学発光(Electrochemiluminescence、ECL)法を用いて、トリス(2,2’-ビピリジル)ルテニウム錯体[Ru(bpy)32+]をECLプローブとして用いた際の、覚せい剤であるメタンフェタミン(MA)とその類似化学種のECL反応についての反応機構の解明、並びに高感度で簡便なスクリーニング分析法の開発を行っている。
先ず、平成29年度はECL計測のための再現性の高いマイクロECLシステムについて、電解セルと発光計測システムの構築を行った。電極電位の制御やボルタンメトリーは北斗電工社製HAB-151Aポテンショスタット/ガルバノスタットにより行い、ファンクションジェネレータから発生させた交流波を重畳させることで、電位変調を利用した新しい電気化学測定システムの構築を行った。同時に、電極からの発光信号を光電子増倍管によって検出し、そのシグナルをロックインアンプに導入し、電位変調ECL測定システムを構成した。構築したシステムを用いて、MAの検出に展開したところ、従来までの直流ボルタンメトリーによるECL測定の場合に比べてMAを著しく高い感度で検出することができた。さらに、その挙動を正確に調べることで、MAと類似化学種を区別して検出できることが確認され、MAのスクリーニング法としての展開が期待された。
開発した方法によるMA検出方法について、本基金によって整備したガスクロマトグラフィー/質量分析計によって得られた結果とのバリデーションを行ったところ、良好な一致を示すことが分かった。現在、反応機構の詳細なキャラクタリゼーションを行っているとともに、実試料分析への展開を試みている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要の記載のとおり、覚せい剤であるメタンフェタミン(MA)に対して電位変調ECL法を用いることで、高感度のMA検出の可能性が示唆された。また、MAとその類似化学種と区別した検出法としての展開が期待され、選択的なMA検出法としての展開まで研究が推進している。現在、MAと類似薬物群のECL反応機構の速度論的な考察を行うため、研究を進めている。

今後の研究の推進方策

平成30年度以降では引き続き、MAと構造が類似したアンフェタミン、ジメチルアンフェタミン、エフェドリン及びメトキシフェナミン等の化合物をECLの共反応物として用い、Ru(bpy)32+による電位変調ECL挙動を調べることで、分子構造と発光強度の関係を系統的に調査する。電位変調ECL計測によって得られる、電位、電流および発光の変数を多変量解析することで、それぞれの化学種が有するRu(bpy)32+に対する速度論的な考察を行うことで、ECL活性の差異の要因を特定する。
同時に、生体試料中のMA分析法への応用を見据えた分析チップの開発を行う。実際の尿などの生体試料中には多量の生体由来の妨害成分が含まれるため、単純にECL分析に展開することは難しいことが想定される。そこで、現場においても測定できるキットの開発を目的とし、簡便な溶媒抽出法と組み合わせたディスポーサブル可能なフィルム電極を試作する。現在まで、予備実験としてスクリーンプリント電極ガラス基板と組み合わせた薄層クロマトグラフィー分析チップの製作を行い、MA類似化学種の電気化学分離検出に向けた基礎的検討を行っている。そこで、作成した分析チップを電位変調ECL検出へ展開させる。Ru(bpy)32+は正に帯電しているため、陽イオン交換膜のNafionを用いて固定化し、カーボンインクと混合した後にインクジェット技術によりガラス及び紙基板に塗布する。その上に薄層クロマトグラフィー用の逆相用の担体を固定することで、ECLスクリーニング分析チップを構築する。その分析チップ上の試料導入部にサンプルをスポットした後、展開溶媒で検出部まで展開し、電位変調ECL測定する。この薄層クロマトグラフィー/電位変調ECL検出法としての分離分析を含めた方法について、基礎的な検討を行うとともに、結果を取りまとめた上で学会発表および論文発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

平成29年度に整備したガスクロマトグラフィー/質量分析システムに係る消耗品について、使用量の節約によって軽微な変更が生じたため、助成金の繰り越しが生じた。次年度使用額は平成30年度請求額と合わせて、同分析機器について、キャリアーガスとして用いる高純度ヘリウムガスの購入として行う計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Electrochemiluminescence and voltammetry of tris(2,2′-bipyridine)ruthenium (II) with amphetamine-type stimulants as coreactants: an application to the discrimination of methamphetamine2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Fumiki、Nitta Saki、Shimizu Ryo、Jin Jiye
    • 雑誌名

      Forensic Toxicology

      巻: 36 ページ: 185~191

    • DOI

      10.1007/s11419-017-0388-3

    • 査読あり
  • [学会発表] リドカイン麻酔薬を共反応物とした[Ru(bpy)3]2+系の電気化学発光反応における超音波照射の影響2017

    • 著者名/発表者名
      髙橋 史樹、清水 亮、金 継業
    • 学会等名
      第26回日本ソノケミストリー討論会
  • [学会発表] 電位変調法と組み合わせた電気化学発光を利用したメタンフェタミンの一次スクリーニング分析法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      髙橋 史樹、新田 咲、清水 亮
    • 学会等名
      第36回日本法中毒学会
    • 招待講演
  • [産業財産権] 薬物検出システム2017

    • 発明者名
      金継業、髙橋史樹、ロイドテイサートン、柴田路子、原哲史
    • 権利者名
      信州大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017-174488

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公開日: 2018-12-17  

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