農業分野において熟練の農家の“勘と経験”を数値化し、収量の増加や高付加価値作物生産、気象変動迅速対応による安定生産を実現しつつある。研究代表者は培地内直接計測を目指した半導体型の小型水分量・イオン濃度センサの開発を行ってきた。現場計測を行っていく中、外乱ノイズでインピーダンス計測の位相計測が大きく乱れ、特に水分量30 %以下や水道水以下の低イオン濃度で検出が困難となっていた。外乱ノイズの除去、低水分量・低イオン濃度計測を可能とし、微弱な電流の検知が必要な低い水分量の土壌で計測できる高感度検出型土中水分量・イオン濃度センサの実現を目指している。 1年目では、センサチップ内部のリーク電流が検出部に流入し微弱信号電流の検出を困難にしていた問題に対し、リーク電流が混入する電極部に保護電極を配置した新たなセンサ構造を提案しデバイス製作を行った。これにより従来のセンサでは計測できなかった低水分量域に対し、4%までの微量な土中水分量までの計測に成功することができた。2年目では、信号の揺らぎに強い|Z|周波数微分-位相変換法を新たに提案し、複数の周波数で計測できる新たなセンサシステムの開発を行った。また、その理論的な証明と実測での効果検証を成功し、特許出願を行った。最終年度となる3年目では、水分を重量で精密に調整したモデル培地を用い、開発したセンサシステムから得られるデータとの線形性、信頼性評価を行った。従来のセンサでは、20%より低い培地内水分量ではバラツキが大きく計測が困難であったが、新センサシステムでは5%以下までモデル培地の水分量との相関性も良好であることが確認できた。このセンサを他分野でも活用し、高速道路法面に水分量センサを設置して観測を行った。6か月以上の長期間の観測を確認し、地下水位の変動を土中水分量として可視化可能であることを確認できた。
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