研究課題/領域番号 |
17K17786
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
遠山 紗矢香 静岡大学, 情報学部, 助教 (80749664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プログラミング教育 / 協調学習 / 建設的相互作用 / 小学校 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,協調学習における表現手段としてプログラミングを活用することで,協調学習の中で学習者が理解を深めるメカニズムとしての「建設的相互作用」の発現可能性を高めることを検証することである.その中でも本研究では,2020年から実施される次期学習指導要領の一部としてプログラミング教育が開始されることを踏まえ,小学生程度の学習者を対象とする. 研究期間の1年目となる今年度は,当初の計画の通り①子ども向けプログラミング教育や協調学習の国内外の先行事例を対象とした調査研究,及び②小学校での教育課程内での実施を志向した主体的・対話的で深い学びを促すためのプログラミング教育の実践開発を行った.①については,プログラミング教育を含むICTを用いた教育をテーマとした国際会議での発表や情報収集,アジア諸国でのプログラミング教育の調査結果をまとめた国内学会での発表や情報収集,協調学習の基本的なメカニズムを整理した論文の発表等を行った.これらを踏まえ,②については小学校教員等と連携しながら,次期学習指導要領に準拠した協調的なプログラミング教育の実践例を3種類開発した. これらを通じて,プログラミングにおいては学習者の考えが外化され,それらの考えの違いを議論し合うことによってプログラムのデバッグが促されたり,プログラムの操作対象としての算数についての児童の考えが深まったりする可能性が見えてきた.一方で,外化物としてのプログラムは抽象度が高いため,それだけでは建設的相互作用の発現可能性を高めることが困難である可能性も見えてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当時の計画に沿っておおむね問題なく進展している.当初の計画の通り,①子ども向けプログラミング教育や協調学習の国内外の先行事例を対象とした調査研究では,プログラミング教育を含むICTを用いた教育をテーマとした国際会議での発表や情報収集,アジア諸国でのプログラミング教育の調査結果をまとめた国内学会での発表や情報収集,協調学習の基本的なメカニズムを整理した論文の発表等を行った.ただし,研究開始段階という状況に応じて研究課題について整理を進めるため,協調学習②関する基本的な研究と,プログラミング教育の研究とをそれぞれ分けてまとめていく部分もあった. ②小学校での教育課程内での実施を志向した主体的・対話的で深い学びを促すためのプログラミング教育の実践開発を行った.②については小学校教員等と連携しながら,次期学習指導要領に準拠した協調的なプログラミング教育の実践例を3種類開発した.中でも,算数の正多角形に関するプログラミング教育の教材は授業の中で完結することを目指してテーマや演習をしぼりこんだものを作成した.ただし,次期学習指導要領で算数と同様にプログラミング教育の導入が予定されている理科については取り組むことができなかった. 今後の研究期間においては,1年目の研究遂行では到達できなかった上記の①,②それぞれについて対応していくことが求められる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から,外化物としてのプログラムは抽象度が高いため,児童が言語的にプログラムを説明することが想定以上に困難である可能性が見えてきた.建設的相互作用の発現には,学習者の一定以上の気づきやそれらを外化することが必要になると考えられるため,今後は①児童がプログラムを説明するための支援を加える,②大学生など一定の言語運用能力を有することが期待される学習者を対象とした検証を行う,といった対応が考えられる.今後は,2年目についての当初の計画を踏まえて,1年目の成果を踏まえながら①の点について小学校教員等と改善を行うための勉強会を行う.また,改善された実践例を用いて小学校教員を対象としたプログラミング教育のための講習会を開催する.さらに,勉強会等を通じてプログラミング教育の実践例を互いに交流する機会を設け,プログラミングが協調学習と互恵的に作用する場合の特徴を抽出することを目指す.
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