研究課題
脳室上衣細胞表面に存在する繊毛運動が障害されることで水頭症の発現が認められる。繊毛に運動障害を生じるDpcdおよびLrrc遺伝子ノックアウトマウスを用いて、その形態学的特徴、分子学的変化について検討を行ってきた。その結果、繊毛運動障害マウスでは第三脳室、側脳室の拡大が認められるが、中脳水道以遠での拡大は認められないこと、出生直後の脳室拡大はなく、PO2以降に徐々に脳室拡大が進行することが確認された。本年はこの成果を元に、特にDpcd遺伝子の関与する内腕ダイニンの発現に着目して検討を進めた。その結果Dpcdノックアウトマウス脳組織において、マウス内腕ダイニン分子種の一つであるDnah1のmRNA発現が減少し、Dnah6は増加していることが明らかとなった。透過型電子顕微鏡を用いた構造解析では内腕ダイニンの部分的な欠損が確認された。このことからDpcd遺伝子ノックアウトにより複数のダイニン分子種の遺伝子多寡と構造異常がもたらされていることが明らかになった。走査型電子顕微鏡を用いた検討ではDpcdノックアウトマウスにおいて、繊毛数の減少、繊毛の極性の乱れが認められた。繊毛数は発言した水頭症の程度に比例して減少することが確認され、繊毛基部の微絨毛については変化が認められなかった。繊毛運動の運動ベクトルは細胞平面極性、繊毛極性によって規定されるとされている。微分干渉顕微鏡を用いた繊毛運動の検討ではノックアウトマウスにおいて、この運動ベクトルにも乱れが生じていることが明らかとなった。免疫染色でも細胞平面極性の乱れが認められており、極性の変化が後天的に増悪する機序について検討を行う必要があると考えられた。
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