動物の頭部・体幹部の重心位置を骨格形態から見積もり、基本姿勢と歩様の関係を見積もることを目的とし、まずは三次元的に保存された恐竜標本や、現生動物標本CT撮像データを中心に、胴体骨格の三次元形状の取得を進めた。そして、三次元胸郭構造から、胸郭の強度を見積もり、歩行姿勢との関係について議論を進めた。 特に、二足歩行性から四足歩行性への進化をしたと考えられているケラトプス類恐竜に焦点を当てて骨格形状を取得してきた。現在まで、世界各地のケラトプス類恐竜の良好な骨格標本を選定し、基盤的な仲間から派生的な仲間まで、5つの主要な分類群の骨格形状を取得した。ケラトプス類恐竜については、今後、軟組織復元を行った上で、重心位置の推定と、骨格強度の計算を行っていく予定である。 そのほか、二足歩行性と四足歩行性の哺乳類や鳥類などの現生種の胸郭形状を取得し、背腹方向の圧縮に対する骨格強度を推定した。前肢で体重支持を行う必要がある四足歩行性の動物は、背腹方向への圧縮に対する強度が著しく高いという結果を得た。一方、完全二足歩行性の動物は、その強度が低かった。史上最大級の完全二足歩行性の動物のひとつであるティラノサウルスの胸郭の強度も推定し、同程度の体重の四足歩行動物と比して低い強度を示した。胸郭強度が低い動物は、前肢を用いて体重支持を行うことが困難であると予想されるため、胸郭の骨格強度は絶滅動物の運動性を評価する上で重要な指標のひとつになると期待される。
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