四肢動物の骨格形態と運動機能の関係について新たな知見を得た。 まず、鳥の胸部骨格形態が、飛翔能力の有無や飛翔様式の違いを反映することがわかった。鳥は飛翔筋の収縮力に応じて烏口骨の折れ曲がりに対する強度を高める必要があるため、上述の骨格形態と機能の関係は整合的である。具体的には、体重に対する烏口骨の強度が、羽ばたき能力をもたないダチョウなどの鳥で最も低く、羽ばたき能力を有する他の鳥では有意に高い強度を示した。また、羽ばたき能力を有する鳥の中では、ペンギンのような潜水性の鳥と通常の羽ばたき飛翔を行う鳥で似たような強度を示したのに対し、アホウドリなど滑翔を行う鳥で最も高い強度を示した。この指標は絶滅した鳥の羽ばたき能力の復元に応用することができるため、恐竜から鳥へと進化する過程のどの段階で羽ばたき能力が獲得されたかを復元できることが期待される。 次に、二足歩行性から四足歩行性への進化が起こったとされる鳥盤類恐竜骨格の重心位置推定を行い、従来の姿勢復元の確からしさの検証を試みた。従来、絶滅動物の重心推定は、組み立てられた骨格のスキャンに肉付けを行うことで進められてきたが、特に椎骨や肋骨の骨の組み上げ方に解釈の余地があり、動物の重心位置推定に大きく影響する胸部骨格の大きさに影響する。本研究では、胸部骨格の三次元形状について、人の解釈の余地が入らない関節した状態で化石化した鳥盤類恐竜骨格の三次元スキャンを用いることで、より正確な重心位置推定を試みている。結果、従来の復元で二足歩行性とされた種についても、新手法では重心位置が大きく前方へ移ることとなり、四足歩行性だった可能性が示唆される結果を得ており、姿勢の進化について新たな解釈をもたらすことになると期待される。
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