研究課題/領域番号 |
17K17795
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
入江 克雅 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 助教 (20415087)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 構造解析 / イオン選択性 / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、電気生理学的手法による活性測定とX線結晶構造解析による高分解能の構造情報を組み合わせることによりNavのNaイオン選択的な透過機構の解明を目指している。初年度において、原核生物由来ナトリウムチャネルの一種であるNavAbのイオン選択性フィルターの変異体についてチャネル活性が消失する変異体とLiイオン選択性が増す変異体を得ている。本年度は上記二つの変異体について以下の研究を行った。 まず、活性消失の変異体ではイオンポアを構成するアミノ酸の嵩高い残基への変異によりポア半径が1Å程度狭くなることを構造解析により明らかにしており、これによりイオン透過のために必要な水和水の交換が困難になることが予想された。そこで、イオンチャネル四量体を一本のポリペプチド鎖で繋いだタンデム四量体を作製して、各サブユニットに変異を導入しポア半径を徐々に狭くすることで、イオン透過が可能で最も狭いイオンポアを有する変異体を電気生理学的手法により同定した。これにより、四量体中三つのサブユニットに変異導入してもチャネル活性が保持されることを明らかにした。これにより、Naイオンの透過に必要な水和水の代わりとして働くタンパク質由来の酸素原子の配置が明らかになった。 また、Liイオン選択性が増す変異体は細胞外側のセリン残基を小さい側鎖の残基への変異で得られており、これらの変異体の発現・精製及び結晶化を行った。野生型とほぼ同等の結晶化条件で単結晶が得られたものの、野生型と同様の測定条件では回折像が得られなかった。そこで、測定条件の改善を行い、高塩濃度での凍結により3.5Å分解能程度の回折データの収集を可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画として、Naイオン選択的な非対称イオンポアを持つタンデム四量体の同定を掲げていた。今回、電気生理実験により、非対称な形状で径が狭いイオンポアをもつNaイオン選択的な変異体を同定した。また、Li選択性を向上させる変異は細胞外に面したセリン残基への変異であり、この残基もイオン選択性を決定する重要な要素であると考えられた。このセリン残基の変異体についても条件検討を行い、今後の構造解析のめどが立っている。以上のことから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定したチャネル活性が変化する変異体のホモ四量体でのX線結晶構造解析を進め変異による構造変化を明らかにする。特にLiイオンの透過性が増す変異体については水和イオンとチャネル分子及び水和水の相互作用が観測可能な高分解能での構造を決定する。 また、高いNaイオン選択性を持ち非対称なイオンポアの構造決定については、同定した径の狭い非対称イオンポアを持つ変異体の構造決定を目指す。変異体タンデム四量体は分子量が大きく大腸菌での発現が困難であることが予想されるため、昆虫細胞での発現系も検討する。この構造解析により、非対称フィルターの高分解能構造を決定する。
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