本研究は、医療等IDを用いてゲノム情報を含めた医療ビッグデータを扱うための法政策の研究を行うものである。医療ビッグデータは、一般的な個人情報と比して、1.対象情報 2.取得状況 3.情報の活用方法の点で特殊性を有する。その中でもゲノム情報は個人識別性や血縁者との共通性等の特徴があり、取得時の同意をはじめ、取り扱いには配慮が必要である。本研究では、そうした特殊性を考慮した上で、医療等分野におけるIDやデータベースの利用を中心とした海外における先進的な制度・仕組みを確認し、学際的・分野横断的な視点から、我が国における法制度との比較検討を行い、日本が課題解決先進国として、超高齢化社会を乗り越えるモデル作りを行うための基礎的な研究成果を生み出すことを目的とする。 本年度は、前年度に調査が実施できなかったヨーロッパの他国、アメリカ・カナダ、アジアの状況を調査し、特にゲノム情報の取り扱いに関してはGA4GH(Global Alliance for Genomics and Health)における国際的な取り組みに関して調査をするとともに、日本における2020年の個人情報保護法改定に向けた議論や次世代医療基盤法、医療等IDに関する議論のアップデートを行った。 本研究の結果、特に、(必ずしも同意によらない)公益目的での利用に関する法整備、データ運用のためのシステム基盤構築、データベース利用に関する立法措置、認知機能が低下した高齢者等同意能力が不十分な場合の取り扱いの設定等の重要性が示唆され、その後のCOVID-19への対応においてもこうした視点での個人に紐付いた医療に関するデータの取扱いの重要性は増しているものと考えられる。
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