研究課題/領域番号 |
17K17800
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
久志本 真希 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50779551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | InGaN / 半極性 / 長波長 / 緩和 |
研究実績の概要 |
本研究では従来から用いられている(0001)GaNとは異なる結晶面上に作製したInGaNを用いて、黄色~赤色で発光する発光 デバイスの作製を目指している.InGaNはIn組成を変化させることで青色~赤色の全可視光領域の発光が可能である.しかし長波長化に向けてI n組成を増加すると、低温成長ならびに大きな格子不整合に起因する結晶品質の低下が問題となる.そこで本研究では従来用いられる結晶面とは異なる結晶面上に作製したInGaNを用いて、黄色~赤色で発光する発光デバイスの作製を行う。本研究で用いる(1-101)InGaNでは高成長レート成長により高温成長が可能で、結晶品質の改善や、従来の(0001)InGaNと異なる緩和機構による欠陥形成の抑制と、発光効率の上昇が期待できる。これらを生かし、発光効率 の高い長波長発光デバイスの作製と、本手法で作製したInGaN発光デバイス構造の発光特性や電気特性を明らかにする. 平成29年度では、緩和により結晶面が傾いたInGaN(チルト)層上にInGaN量子井戸構造を作製することで黄色~赤色発光層の作製を目指した.まず初めにチルト層の成長条件の最適化として,TMIの供給量などの成長条件の最適化を行った.その結果一般的に用いられるTMI供給による組成制御ではなく,InGaN層の膜厚による組成制御や緩和率制御が可能であることが分かった.このチルト層の発光層への影響を見るため,チルト層上に発光層を作製しチルト層の有無によりPL発光波長やPL強度について検討した.以上のことからInGaNチルト層の成長条件の影響および,チルト層の発光層への効果について検討を行い,長波長化への有用性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず初めにチルト層の最適化を目指して,成長条件の最適化を行った.TMI供給量を増加すると,三角錐上のヒロックが観測され,供給量を上げるほどヒロックが大きくなることが分かった.これは過剰なIn供給によりできたInドロップレットが原因と考えられるが,詳細は今後の検討課題である.これらのことからTMI供給量によるIn組成の高組成化に限りがあることが分かった.そこで同一条件で成長し,成長時間を変化させることで膜厚を変えたInGaNチルト層を成長した.その結果,同一の成長条件にも関わらずInGaN層の発光波長が長波長化することがわかり,XRDによってチルト角度が変化していたことからチルトによる緩和が進行することで同一条件にも拘らず組成が変化したと考えられる. 次にInGaNチルト層が発光層に与える影響を検討するため,チルト層上に発光層を形成した.この時比較のため同一条件で,チルト層を持たない発光層の成長を行った.これらを比較するとチルト層を有さない発光層に比べ,チルト層を加えることで発光波長の長波長化および,発光強度の増加が見られた.これらのことから,発光波長に合わせたInGaNチルト層によって高効率な長波長発光層が得られる可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては,InGaNチルト層の成長およびI,チルト層上InGaN発光層の作製および評価を行った. 今後はそれらの詳細な評価を行う予定である.例えば緩和過程と発光特性、不純物取り込みの違いを検討する.緩和過程や欠陥解析として(S)TEMを、発光特性と表面モフォロジとの相関についてはPLあるいはCLとAFM、不純物の取り込みはSIMSを用いる。これらを各成長手法で比較することで、発光効率への影響について解析し、本成長手法における更なる発光特性向上を目指す. 加えて発光デバイス作製に向け,チルト層上の電気伝導層の作製を行う.SiおよびMgのドーピングを行い,チルト層の有無による電気特性への影響を評価予定である.特に本研究において導入される欠陥は従来の(0001)面で形成されるものとは異なり報告がない.そこでGaN基板上に単純なpn構造を作製し、エミッション顕微鏡を用いたリーク検出などの手法を用いることで、非極性面特有のチルト緩和による電気特性への影響を検討する予定である.
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