研究課題/領域番号 |
17K17804
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺澤 祐高 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (90546160)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 二層流体 / ナヴィエ・ストークス方程式 / Diffuse Interface Model / Phase-Field Model / 粘性流体 / 混相流 / カーン・ヒリアード方程式 / 非局所作用素 |
研究実績の概要 |
本年度は、非圧縮性流体の二層流体モデルで二つの流体の密度と粘性が異なる場合のモ デルについて研究を行った。そのようなモデルには、古典的には、Lowengrub-Truskinovsky モデルがあり、 そこでは、二つの流体の速度場をそれぞれの流体の密度によって平均した速度場を考え、その速度場は非圧縮性を持たない。Abels-Garcke-Gru en(’11) では、二つの流体の速度場の体積平均をとった速度場を考えるモデルで、熱力学的整合性を持つものを考え、平均速度場が非圧縮性を持つ。本年は、本モデルに現れるカーン・ヒリアード方程式がさらに非局所性を持つモデル(非局所Navier-Stokes-Cahn-Hilliard方程式)に対して、Helmut Abels 氏 (Regensburg 大学)との共同研究により、弱解の構成を試み、それに成功した。本モデルは分子間の長距離相互作用を加味したモデルで、より現実に近いモデルであると考えられている。本研究では、もとの方程式に平滑化効果を持つ項を付け加えた方程式の時間離散化に、適切なエネルギー等式をみたすような形で、正則化を施すことが一つのポイントとなった。当初は、平滑化を持つ項についている係数と時間刻み幅の大きさを別々にとり、それぞれを順番に0に近づける極限を考えて、弱解の存在を示す予定であったが、それらを同じに取り、同時に0に近づけるという手法により、より簡明にもともとの方程式の弱解の存在を示すことができた。近日中に本結果を学術誌に投稿の予定であり、プレプリントサーバーであるarXivへの投稿も予定している。本研究のため、Regensburg 大学のAbels氏のもとを訪問した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、平成29年度において、平滑化効果を持つ項を付け加えた、非局所Navier-Stokes-Cahn-Hilliard方程式の時間離散近似方程式の解の存在を示し、さらに、平成30年度において、時間離散近似の時間幅のパラメーターと近似方程式の平滑化効果を持つ項の係数のパラメーターをそれぞれ順番に0に近づけることによって、もとの方程式の弱解の存在を示す予定であった。しかし、時間離散近似の時間幅のパラメーターと平滑化効果持つ項のパラメーターを同じに取り、同時に0に近づけることにより、平滑化効果を持つ項を付け加えた非局所Navier-Stokes-Cahn-Hilliard方程式の時間離散近似方程式の解の存在から、元の方程式の解の存在を一つのステップで示すことができることを発見した事により、研究がより進展し、我々の目標としていた、もとの方程式(=非局所Navier-Stokes-Cahn-Hilliard方程式)の弱解の存在を平成29年度に示す事ができた。平成30年度では、本研究をより発展させるため、上記成果を学術誌に投稿するとともに、流体力学などがテーマの研究集会で発表し、広く意見を募りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初予定していた通り、非局所Navier-Stokes-Cahn-Hilliard方程式が定常的外力項を持つ場合の定常解の存在、その定常解の安定性、力学系的性質(アトラクターの存在、大きさ)などについて、引き続き考察を行って行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が当初予定していたより、安く済んだため、次年度の旅費のために繰り越した。
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