研究課題/領域番号 |
17K17804
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺澤 祐高 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (90546160)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二層流体 / 拡散界面モデル / 弱解 / 非局所エネルギー / カーン・ヒリアード方程式 / ナヴィエ・ストークス方程式 |
研究実績の概要 |
水と油などの二種類の流体の運動を記述する、非圧縮性粘性流体の方程式には、二種類のものがあり、一つは鋭界面モデルと言われるモデルで、もう一つは拡散界面モデルと言われるモデルである。拡散界面モデルは、鋭界面モデルと比べて、流体がちぎれたり、くっついたりする位相的変化を起こす時の挙動の記述により適しているという利点がある。拡散界面モデルは、二つの流体の密度が同じ場合のモデルが古典的なモデル(モデルH)で、Hohenberg-Halperin('77)によって提出された。 これは、Navier-Stokes方程式と相分離を記述するCahn-Hilliard方程式が連立したモデルである。二つの流体の密度が異なるモデルとして、Lowengrub-Trukinovsky('98)によるモデルがあるが、平均速度場が密度平均速度場である関係で、これは非圧縮性のモデルとならない。一方、Abels-Garcke-Gruenn('12)によって提唱された、体積平均速度場を考えるモデル( AGGモデル)は、非圧縮性モデルであり、一層のナヴィエ・ストークス方程式と性質が似ている方程式が得られる。昨年度までの研究で、AGG型のモデルで、流体粒子の長距離相互作用を加味した、非局所自由エネルギーを持つモデルに対して、弱解の存在を得ている。今年度は、局所自由エネルギーを持つAGGモデルと非局所自由エネルギーを持つAGGモデルの弱解の比較を行った。具体的には、あるパラメーターがある値に近づいたときに、非局所自由エネルギーが局所自由エネルギーに適当な意味で収束すると考えられるときに、対応する弱解も適当な意味で収束するかという問題を考えた。流体方程式と連立されていない、単独のCahn-Hilliard方程式に対しては、対応する既存の結果がある。現在、取り組んでいるが、まだ、具体的な成果は出ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
弱解の存在について、研究成果を得ることができているが、研究計画で記述した、その漸近挙動の研究については、研究を行うことが、まだできていない。現在は、解の漸近挙動の問題と関係していると思われる、局所自由エネルギーを伴うAGGモデルと非局所自由エネルギーを持つAGGモデルの間の関係について調べている。より具体的には、それぞれの対応する弱解の間の関係について調べている。当初の計画と関係しているが、別の研究課題について取り組んでおり、まだ、それについての成果を得ることができていないため、研究課題の進捗状況はやや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、取り組んでいる局所自由エネルギーを持つAGGモデルの解と非局所自由エネルギーを持つ解の関係を調べる研究課題を継続して取り組んでいく予定である。それに関する一定の成果を出した後、非局所自由エネルギーを持つAGGモデルの弱解の滑らかさ及び時間無限大での漸近挙動などの問題について考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、出張及び研究集会の開催が難しく、研究費の使用が難しかったため。
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