研究課題/領域番号 |
17K17804
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺澤 祐高 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (90546160)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二層流体問題 / 拡散界面モデル / カーン・ヒリアード方程式 / 非局所自由エネルギー / 局所自由エネルギー / 局所漸近 / 定常ナヴィエ・ストークス方程式 / リュービル型定理 |
研究実績の概要 |
本年度は、二層流体の拡散界面モデルについての適切性と、非有界領域における、定常Navier-Stokes方程式の解の漸近挙動及びそのリュービル型定理への応用に関する研究を行った。二層流体の拡散界面モデルに関しては、非局所モデルの弱解が局所モデルの弱解に収束するかという問題があるが、それに関して、肯定的な結果を与えた、Helmut Abels氏との共著論文が、本年度に出版された。また、秋季の日本数学会の特別講演において、本結果について扱った。非局所モデルには、2020年にAbels氏との共同研究で扱った、化学ポテンシャルが領域ラプラシアンを伴う場合があるが、それに関する解の収束に関する話は、まだ扱われていない。カーン・ヒリアード方程式よりも単純な熱方程式の場合から、本問題にアプローチしたいと考えているが、まだ、十分な結果を得るには至っていない。この他には、小薗英雄氏(早稲田大学)と若杉勇太氏(広島大学)との共同研究により、円筒の外部領域において、定常Navier-Stokes方程式の解であって、旋回を持たないものを考え、それの漸近挙動を、速度場のq乗可積分条件(q \leq 2)の下で考察した。ただし、速度場は鉛直方向に周期性を課し、可積分条件は、領域を鉛直方向の一周期で限った部分で考えている。本結果は、学術誌に掲載が決定された。最近、同氏等との共同研究により、二つの円筒に挟まれた領域での流れであるTaylor-Couette流の、速度場が十分小さいという仮定の下での一意性の結果を得た。本結果も一種のリュービル型定理とみなせる。これは、Bang-Gui-Wang-Xie('22)による、ポアズイユ流に対する同種の結果のTaylor-Couette流の場合への拡張と見做すことができる。この結果は、すでに学術誌に投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で目標としていたのは、二層流体の非局所拡散界面モデルの解の存在と時間無限大での漸近挙動である。二層流体の非局所拡散界面モデルの解の存在については、2020年度に出版された。残念ながら、解の時間無限大での漸近挙動については、まだ、結果が得られていない。ただ、非局所拡散界面モデルと局所拡散界面モデルの解の関係という基本的な問題に関して、満足の行く結果を得ることができた。本結果は、学術誌に出版された他、2022年度日本数学会秋季総合分科会の函数方程式分科会の特別講演でもその結果についての講演を行っており、研究者コミュニティーにおいて、一定の評価を得ていると考えている。本結果は、また、非局所拡散界面モデルの解の漸近挙動と局所拡散界面モデルの解の漸近挙動を結びつける上でも、重要な役割を果たすことが期待される。研究課題と関連する話題として、定常ナヴィエ・ストークス方程式のリュービル型定理についても研究を行っており、それについても、学術誌に発表した他、Taylor-Couette流の一意性の問題について結果を得ており、学術誌に投稿済みである。
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今後の研究の推進方策 |
二層流体の拡散界面モデルにおいて、領域ラプラシアンを伴う非局所モデルの解が局所モデルの解に収束するかという問題に取り組む。それにあたって、より単純化された方程式での問題を、まず考察する必要がある場合は、それに取り組む。定常ナヴィエ・ストークス方程式の解の漸近挙動に関しては、電磁流体方程式などの類似の方程式の場合において、本年度得た結果の対応物について、考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していたドイツのレーゲンスブルク大学のHelmut Abels氏との、「二層流体の非局所拡散界面モデルの解が局所拡散界面モデルのそれに収束するか?」という課題に関連する共同研究を、海外出張により行うことがなくなった。そのための渡航費の支出を科研費から予定していたが、それがなくなったため、次年度利用が生じた。次年度使用額は、当初予定していた、主に海外出張の渡航費として用いる予定である。そのほかには、本研究課題に関連する情報収拾もしくは研究発表のための国内出張のために用いる。
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