代表者は、二層流体の拡散界面モデルについての適切性に関して、研究を行ってきた。2020年度に、Helmut Abels氏との共同研究により、 Abels-Garcke-Gruen('12)により得られた、異なる密度を持つ二種類の非圧縮性流体に対する拡散界面モデルのある非局所モデルに対して、解の存在定理を得た。カーンヒリアード方程式の部分に現れる拡散作用素が、局所作用素であるラプラシアンとなっているモデルがAbels-Garcke-Gruenによるモデル(局所AGGモデル)であるが、ラプラシアンを非局所作用素である領域ラプラシアンに置き換えたモデルを考えた。また、2022年度には、特異性を持たない核を持つ非局所作用素を持つAGGモデルの弱解が、あるスケール極限で、局所AGGモデルに適切な位相で収束するという結果を得た。特異性を持たない核を持つ非局所作用素を持つAGGモデルの弱解の存在は、2016年にFrigeriによって示されていた。最終年度である、本年度は、2020年度にAbels氏との共同研究で解の存在を示した、非局所AGGモデルについて、適切な極限を考えることにより、局所AGGモデルの解に収束することを示せないかという問題について、Abels氏と共同で取り組んだ。また、それに関連して、空間非等方性を持つような非局所作用素を伴う、単独の非局所カーンヒリアード方程式に対して、その解が局所方程式のそれに収束するかどうかという問題にも取り組んだ。まだ、投稿論文の形になっていないが、近日中に完成させる予定である。この他には、定常ナビエ・ストークス方程式のリュービル型定理の一つとして、テイラー・クエット・ポアズイユ流の特徴付けを行い、その結果をまとめた論文が流体力学の専門誌に掲載された。同研究は、小薗英雄氏、若杉勇太氏と共同で行った。
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