研究課題/領域番号 |
17K17808
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 敦之 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (30774286)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | GaN / 窒化ガリウム / パワーデバイス / 転位 / ダイオード / 漏れ電流 |
研究実績の概要 |
今年度は交付申請書に記載の通り、逆方向電圧印加時の漏れ電流と転位の関係解明に取り組んだ。その結果、GaN縦型pinダイオードにおいて、バーガースベクトル1cをもつ貫通螺旋転位が逆方向耐圧時の漏れ電流の原因となっていることを明らかにした。 具体的には、低抵抗n型GaN基板上にエピタキシャル成長にてn-型層、p型層を形成し、円形メサ等周辺耐圧構造を施したpinダイオードをいくつも作製し、I-V測定による漏れ電流の確認、エミッション顕微鏡による漏れ箇所の特定、KOHエッチングによる転位位置の可視化と漏れ位置の比較、漏れる転位のTEM等による成分分析を行い、上記の結果を得た。 今回題材としたGaN縦型pinダイオードはそれ自体も利用価値の高いデバイスであるが、pn接合での耐圧構造はそれ以外のデバイス(例えばトランジスタ等)でも耐圧構造として採用される基本的なものである。そのため、今回の1c貫通螺旋転位が逆方向耐圧時の漏れの原因となるという現象はショットキー接合のみの一部のデバイスを除くほぼ全てのGaN縦型パワーデバイスに普遍的にあてはまる現象である。またデバイス中の1cの貫通螺旋転位は基本的にはGaN基板から引き継いで存在しているため、効果的な改善手法としてGaN基板作製時に1cの転位が発生しないような検討が必要であることを明らかにした。 なぜ1cの螺旋転位が漏れるかについて、転位中への不純物の偏析調査等も行ったが、漏れる転位、漏れない転位を区別するような特徴的な結果は得られなかった。現在は第一原理計算等による転位の状態から詳しく調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の29年度目標であった逆方向耐圧時の漏れと転位の関係を明らかにできたので、概ね順調に進展していると判断した。細かいところでは転位の同定に複屈折顕微鏡を用いようとしたが、まだデータ取得中である等の遅れもあるが、転位の同定にはKOHやTEMを用いたり、新しい転位観察手法として多光子PL顕微鏡を取り入れたり等、予定になかった進展もあるので概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、30年度は順方向通電と転位の挙動についての調査を主に行っていこうと考えている。また、29年度の成果を社会に還元できるよう、引き続き漏れる転位が何故漏れるか、その対策方法を検討できるレベルまで解明したい。
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