研究課題
今年度も引き続き逆方向電圧印加時の漏れ電流と転位の関係解明に取り組んだ。その結果、当初予想したようにpnダイオードの逆方向耐圧時の漏れ電流と各転位種に単純な関係(転位の種類さえわかれば完全に漏れる漏れないが予想できる)は無いことが分かった。以下に本年度明らかにしたことを箇条書きにて述べる。①漏れる転位はダイオード中のpn接合付近では閉じた転位ではなく、直径40nm程度のm面を壁面として持つ中空のナノパイプとなっていることが分かった。②ただし、ナノパイプにも漏れるもの漏れないものが存在していることが分かった。③漏れるもの漏れないもの両方のナノパイプの形状等に大きな違いは見つけられなかった。またナノパイプの壁面についてTEM-EDSで不純物濃度の違いを観察したが、C,Si,O,Mg等の疑わしい不純物濃度に大きな違いがないことが分かった。④量としては大部分を占めている刃状転位及びa+c程度の小さなバーガースベクトルを持った混合転位では今のところ、ナノパイプ以上の漏れ電流は確認されていない。現在は、ナノパイプの漏れる漏れないの違いは内壁m面への不純物の取り込まれ方の違いではないかを疑い、どのようなバリエーションがあるのかを第一原理計算を用いて解析中である。また、上記研究の過程で原因究明は完全ではないが、対処法として圧力の高い条件でエピ層成長を行うとナノパイプがほとんど生成されず、漏れるスポットが極端に少ないpnダイオードを作製できることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
おおよそ漏れる転位がどういうものか分かってきた。まだ何故漏れているのか完全には解明できていないが、漏れる転位をどのようにすれば漏れない状態にできるかについてもわかってきたので、概ね順調に進展していると判断した。通電劣化については当初予定していた通りには行えていないが、新しい手法(多光子PL顕微鏡)を用いて当初予定していた方法よりもより明確に現象を観察できているので、順調に進展している。
当初の計画通り、31年度は順方向通電と転位の挙動についての調査を主に行っていこうと考えている。多光子PL顕微鏡によって、基底面転位及び貫通転位は光学的刺激によっては大きな変化が起こらないことがわかっているので、これを実際のデバイス利用に近い電気的な刺激でも確認する。
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