研究課題/領域番号 |
17K17811
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田部井 賢一 三重大学, 医学系研究科, 助教 (60609684)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知症 / 音楽療法 / 神経心理検査 / 脳イメージング |
研究実績の概要 |
認知症患者とその前段階である軽度認知障害の高齢者は800万人を超え、10年後には65歳以上の3人に1人が認知症患者とその予備軍となる。音楽は妄想や興奮状態など、認知症の心理症状の緩和に対する非薬物療法として、老人ホームやデイサービスなどで頻繁に使用されている。症状改善に関する症例報告は多数発表されているが、その機序はほとんどわかっておらず、医学的に妥当な方法を用いて音楽の有効性を明らかにすることは、根本治療薬がなく患者数が激増している現代社会において急務となっている。本研究では、認知症患者を対象に音楽による進行抑制作用の機序と、健常高齢者を対象に音楽による認知症予防の機序を、脳画像と神経心理検査のデータから示し、そこで構築したデータベースに基づいた音楽療法プログラムを作成する。 軽度から中等度の認知症患者に対する非薬物療法の効果の予測因子を明らかにするために、介入前の認知機能と脳容積を調べた。その結果、介入前の改善群と非改善群のMMSEは差がなかった(p = 0.73)。介入前の改善群の認知機能は、音楽体操では論理的記憶の即時/遅延再生 (LM-I/-II)、脳トレではレーブン色彩マトリシス検査(RCPM)と機能的自立度評価(FIM)が、非改善群に比し成績が良かった。介入前の改善群の脳容積(VBM)は、音楽体操では前帯状回皮質、脳トレでは左中前頭回が、非改善群に比し大きかった。結果が示した認知機能と脳領域は、各介入を実行するために重要な役割を担っていることが先行研究で示されている。本研究は、介入を実行するために重要な認知機能と脳領域が非薬物療法の効果の因子となり、介入前の評価から非薬物療法の種類を選択することの可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知症患者を対象に音楽による進行抑制作用の機序を、脳画像と神経心理検査のデータから示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
健常高齢者を対象に音楽による認知症予防の機序を、脳画像と神経心理検査のデータから示し、そこで構築したデータベースに基づいた音楽療法プログラムを作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度に投稿した論文について、掲載決定時期が当初の予定より遅れた為。 (計画)論文掲載料に使用する。
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