研究課題/領域番号 |
17K17812
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 直希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (60769339)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 遺伝子発現制御 / 脳神経疾患 / 老化 / 神経科学 / ILEI / Amyloid-β / γ-Secretase |
研究実績の概要 |
我々は脳内Aβ産生を抑制するタンパク質ILEI/FAM3Cを同定し、老化やアルツハイマー病(AD)では脳内発現が負に制御されることを示してきた。本研究では、ADの基本病態である脳内Aβ蓄積をきたす一次的原因を解析し、発症前診断法や先制治療法の開発に資することを目的としている。 ①加齢に伴う脳内ILEI発現低下のメカニズム解明 ・ILEI転写因子の同定:前年度に続き、ILEI転写因子の特定を進めた。マウス神経系細胞Neuro-2aやHEK293細胞株等に対し、レポーターアッセイで特定したILEI転写制御領域への結合が予測される候補因子に関して強制発現、ノックダウン等を施し、前年度に作製したルシフェラーゼ型レポーターによるILEI転写活性の定量に加え、real-time RT-PCRやウエスタンブロットによりILEIの発現変化を定量解析することによりILEIの転写因子の解析を進めた。これらの解析により、ILEI発現亢進させる候補因子を3個、発現抑制する候補因子を3個得た。 ②脳内ILEI発現レベルの減少がAD発症のリスク因子となることの検証 ・ILEI-floxedマウスの作製: ILEI遺伝子の開始コドンを含むエクソン2を挟む形でloxP配列を挿入するジーンターゲティングを行ったES細胞を用い、6ラインのILEI-floxedキメラマウスを得たが、いずれもgermline transmissionが認められなかった。そこで、ゲノム編集CRISPR/Cas9により、作製したところ、ILEI-floxedアレルを持つマウスを得られた。得られたILEI-floxedマウスのうち3ラインの産仔でloxP挿入されたアレルを確認できた。続いて、目的のコンディショナルノックアウトマウスを得るため、App(NL-F)マウスおよびCaMKII-CreERT2マウスと掛け合わせを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①加齢に伴う脳内ILEI発現低下のメカニズム解明 ・ILEI転写因子の同定:前年度に引き続き、ILEI転写因子の特定を進めており、候補因子が得られている。マウス神経系細胞株Neuro-2aや非神経系細胞株HEK293等に対し、特定したILEI転写制御領域への結合が予測される候補因子に対し、強制発現、ノックダウン等を施し、real-time RT-PCRやウエスタンブロット等によりILEIの発現変化を定量解析することによりILEIの転写因子の解析を進め、ILEI発現亢進させる候補因子を3個、発現抑制する候補因子を3個得た。 ②脳内ILEI発現レベルの減少がAD発症のリスク因子となることの検証 ・ILEI-floxedマウスの作製: ILEI遺伝子へのジーンターゲティングを行ったES細胞を用い、計6ラインのILEI-floxedキメラマウスを得たが、いずれもgermline transmissionが認められなかった。そこで、ゲノム編集CRISPR/Cas9を用い、ILEI-floxedマウスを作製したところ、得られたILEI-floxedマウスのうち3ラインの産仔でloxP挿入を確認できた。目的のコンディショナルノックアウトマウスを得るため、App(NL-F)マウスおよびCaMKII-CreERT2マウスと掛け合わせを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①加齢に伴う脳内ILEI発現低下のメカニズム解明 ・ILEI転写因子の同定:前年度より継続し、ILEI転写因子の特定を行う。得られた候補因子の強制発現、ノックダウン等を施し、ルシフェラーゼ型レポーターによるILEI転写活性の定量に加え、real-time RT-PCRやウエスタンブロットによりILEIの発現変化を定量解析し、ILEIの転写因子を特定する。加えて、加齢によるILEI転写低下機構の解析を行う。 ②脳内ILEI発現レベルの減少がAD発症のリスク因子となることの検証 ・ILEI-icKOマウスの解析:前年度に引き続き、ILEI-floxedマウスとCaMKII-CreERT2マウス、APP(NL-F)マウスの交配によるAPP(NL-F);ILEI-icKOマウスの作出を進める。タモキシフェン投与によるILEI遺伝子欠損誘導後の脳Aβ蓄積の経時的変化と記憶障害出現について、行動実験や脳組織および脳髄液に対するELISA、ウエスタンブロット、免疫組織化学等の実験を行い、陰性対照マウスと比較評価を行う。 ③脳内ILEIレベルが発症前ADのバイオマーカーとして成立することの検証 AD及び軽度認知機能障害(MCI)患者の髄液中ILEI定量:AD及びMCI患者の髄液のILEI定量解析を進め、髄液中ILEIレベルが発症前ADのバイオマーカーとなるかどうかを明らかにする(髄液サンプル収集は新潟大学で行う。)。
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次年度使用額が生じた理由 |
ILEIコンディショナルノックアウトマウスの作出を進めているが、その誘導のためマウスに投与するタモキシフェン等及びその投与に用いる器具の購入を次年度にしたため。
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